■今日のテーマ
今日のテーマは、たまに質問を受けることがある「弁済をするについて正当な利益」(民法474条2項)とは何か?です。
特に目新しい事項を記すものではございません。備忘録的記事です。
(第三者の弁済)
第474条1 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
■意義
改正法474条2項は、弁済による代位の規律(500条)と平仄を合わせるため、「利害関係」を「正当な利益」と変更した上、正当な利益を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済をすることができないという規律は維持しつつ(474条2項本文)、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、弁済を有効とする旨の規定(同項ただし書)を設けた。
改正前民法下の「利害関係」に関する判例の考え方は、基本的には改正法下の「正当な利益」の有無の解釈としても妥当すると考えられる。*1
「弁済をするについて正当な利益を有する者」については、民法改正前に旧500条に関して学説の示した分類が、新474条についても有用である。すなわち、(a)「弁済しないと債権者から執行を受ける地位にある者」と、(b)「弁済しないと債務者に対する自分の権利が価値を失う地位にある者」の2類型である(我妻252頁など)*2
■具体例*3
「正当な利益」を有する第三者の例としては以下の者があります。
- 物上保証人(大判昭和4年1月30日法律新聞2945号12頁)
- 担保目的物の第三取得者(大判明治40年5月16日民録13輯519頁)
- 同一不動産の後順位担保権者(大決昭和6年12月18日民集10巻1231頁)
- 借地上の建物の賃借人(最判昭和63年7月1日判時1287号63頁)
- 債務者の一般債権者(大判昭和13年2月15日民集17巻179頁。通説)
他方、債務者の妻の妹など、単なる事実上の利害関係を有しているに過ぎない者は、「正当な利益」を有する者には当たりません。この当たらない例として実務上生じうるのは、住宅ローンの債務者の配偶者や親というものがあります。
■公式サイト
※ 大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません。
※ お問合せは下記のお電話 or 弊所サイトからお願いいたします。
竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470