今回のテーマ
このページは、いわゆる「社員権」に関する投資詐欺について、下級審裁判例を幾つかメモするものです。備忘録的なページです。
東京地判令和6年10月7日金判1716号39頁
争点(1)(本件各勧誘の違法性)について
(1)本件各契約の性質についてみると、〔1〕本件社員権は、形式上は合同会社である被告Yの社員権たる地位を取得するものであるが、同社の定款上、本件社員権の取得者は同社の組織、運営及び管理に関して何らの権限を有せず、専ら退社時の払戻金及び事業年度ごとの利益の分配を目的とするものであり(前提事実(2)ア)、〔2〕G8Cは、オンラインカジノでの使用を想定しているものの、日本居住者はこれに参加することはできないことから、専ら日本円への換金を目的とするものである(甲8、9〔2頁〕)。
したがって、本件各契約は、いずれも実質的には対象商品(本件社員権及びG8C)の価値の上昇による換価と配当(本件社員権のみ)を志向するものであって、投資に属するものといえ、被告らがその投資の勧誘において一般投資家のリスク判断に重要な事実を秘し、又はこれを誤らせるような事実を説明した場合には、欺罔によって当該取引をさせたものとして、不法行為を構成するものと解するのが相当である。
東京地判令和5年12月26日LEX/DB25611713
(1)会社法597条に基づく損害賠償責任の判断枠組み
会社法597条は、合同会社の業務を執行する有限責任社員が、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う旨を定めているところ、合同会社の業務執行社員については、他の社員の職務執行を監督する職務を課す規定及び他の社員の業務執行の適正性を確保するための監視義務を課す規定はないものの、第三者の利益保護の観点に鑑み、他の業務執行社員等の業務執行を積極的に調査する必要はないとしても、その業務執行の過程で、他の業務執行社員等によって個別的法令に違反し、又は忠実義務違反となるような業務執行がされたことを認識し、又は認識し得たときは、その是正のために適切に対応しなければならないものと解するのが相当であり、当該任務を怠り、第三者に損害が生じた場合は、会社法597条に基づき、第三者に対し、損害を賠償する義務を負うものと解するのが相当である。
東京地判令和5年12月22日LEX/DB25611890
このようなことからすると、F社の社員権の取得勧誘は、顧客の出資判断の基礎となるべき重要な情報を秘匿して行われた組織的な違法行為に当たるものというべきであり、F社と原告の間の本件各社員権取得契約の勧誘・締結も、かかる違法行為の一環としてなされたものと認めるのが相当である。
東京地判令和5年12月14日LEX/DB25612989
2 争点1(本件定款15条ただし書による退社及び払戻制限の可否)について
(1)前提事実(2)並びに認定事実(1)及び(2)によれば、被告においては、持分譲渡が原則として行えないものとされる一方、退社に伴う払戻しが原則として認められており、社員による投下資本回収は、原則として退社に伴う払戻しによることが予定されていたと認められる。このように、被告において退社に伴う払戻しが投下資本回収の重要な手段となっていたことのほか、これに対する制限が本件定款15条本文に対するただし書として規定されるにとどまることなども踏まえれば、本件定款15条ただし書の適用場面は制限的に解するのが相当であるところ、同条ただし書による払戻制限の可否は、被告の財務状況、被告による事業運用の状況、社員による払戻請求の額及びこれに対する被告の対応その他の諸事情に照らし、本件定款15条ただし書の適用に係る裁量権行使が合理的なものとして是認されるか否かにより判断すべきである。
東京地判令和5年12月13日LEX/DB25611424
イ 適合性原則違反について
(ア)金融商品取引業者の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から著しく逸脱した金融商品取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となるものと解される。そして、顧客の適合性を判断するに当たっては、具体的な商品特性を踏まえ、これとの相関関係において、顧客の投資経験、金融商品取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである(最高裁平成15年(受)第1284号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1323頁参照)。
(イ)前記認定事実によれば、本件社員権は、被告会社の有限責任社員の地位を取引対象とし、被告会社に利益が生じた場合にそれが分配される一方、元本保証がなく、流動性に関するリスクもあるほか、中途解約については、被告会社の承諾が必要であり、払戻条件はLが決定するとされている上、払戻額は、持分金額から同額又出資金額のいずれか高い額の30パーセントに相当する額を控除した額であるとされていること(前記1(3))からすれば、任意退社した際には元本が大きく毀損するリスクがあるものといえる。また、約定の期間経過時における払戻しについても、社員の承諾いかんにかかわらず、払戻しを1年間延長することができ、その後も同様に延長できることとされていることをも踏まえると、本件社員権を購入することは、投資として、相当高いリスクを有するものであったということができる。
東京地判令和2年6月10日LEX/DB25585510
さらに,本件出資契約の対象は,名目上は合同会社の社員権であるものの,その実質は出資された金銭を充てて投資事業を行い,その収益の配当を得るものであるから,集団投資スキーム持分(金融商品取引法2条2項5号)に当たると解し得る上,合同会社の社員権も金融商品取引法の「有価証券」とみなされる(同法2条2項3号)から,被告KがC社の社員権に関する募集・売出しの勧誘を代行した行為は,「有価証券の募集若しくは売出しの取扱い」(同法2条8項9号)に当たり,「第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利についての同条第8項・・・第9号に掲げる行為」として,「第二種金融商品取引業」(同法28条2項2号)に該当する。そうすると,金融商品取引業は,内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことはできないから(同法29条),登録のない被告Kがこれを行ったことは,同法第29条に違反するものと認められる。
東京地判令和2年3月19日LEX/DB25584401
以上の事情に鑑みれば,本件各事業は,架空の取引を対象とした実体のないものであったと考えられる。
(3)そこで,被告らの責任について検討するに,被告会社において,業務執行社員(代表社員)である被告P2は,被告会社や本件各事業組合に関する事務手続・経理手続等を担当し,業務執行社員である被告P3は,投資家に対する営業活動等を担当するなど,互いに役割分担をしながら,投資家からの出資金を募り,被告会社が得た収益を折半しようとしていたものであって(認定事実(3)),被告らは,一般投資家である原告に対し,本件各取引を勧誘するに当たっては,事前に本件各事業の実体を十分に調査し,原告に不測の損害を与えないように注意すべき義務を負っていたというべきである。
そうであるにもかかわらず,被告らは,単にF社ないしP5から本件各事業のスキームに関する情報を得たのみで,実際には実体のないものであった本件各事業について何ら合理的な調査もせず,本件各取引について高利の配当が期待される安全な取引であることを前提に,被告P3において,原告に対して複数回にわたる面談やメール等を通じて本件各事業に対する出資の勧誘等を行い,被告P2において,被告P3から紹介を受けた原告との間での契約締結手続等を行い,最終的に原告をして本件各事業に合計3014万円もの多額の資金を出資させるという本件各取引を行わせたものであるから(認定事実(3)ないし(5)),原告に対する上記被告らの勧誘等の行為には違法性が認められ,また,上記の経緯に照らし,上記被告らには少なくとも過失が認められることが明らかである。
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