今日のテーマ
最近話題になっている「独身偽装」。
「未婚はブランド」 疑似恋愛でもしたい、独身偽装する男性の言い分 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20250331/k00/00m/040/125000c
「不倫してたんだ」。既婚者が独身と詐称して交際する「独身偽装」の被害者は、まるで自分の意思で不貞行為をしたかのような心ない言葉に心をえぐられる。
独身偽装は交際相手の人生を狂わしかねない行いだが、だます側には、良心の呵責(かしゃく)はないのだろうか。
では、独身と聞き、実際にそれを信じて交際していたにもかかわらず、交際相手が実際には既婚者だった場合、その交際相手に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
結論
独身偽装していた相手に損害賠償を請求することはできます。
ただし、「注意すべき点」が1つあります。
それは、独身であるか否かは、①結婚を前提として交際をした場合や、②独身と信じたからこそ交際をしたという場合(騙されなかったら交際をしなかった場合)においてのみ重要(法的に意味がある)ということです。
そうした交際でない場合は、独身と偽っていたとしても、それだけで直ちに違法とは言えません(後掲の大阪地判令和6年7月19日や東京地判令和4年8月25日をご参照)。
実際の裁判例
この点については、最近の裁判例がいくつかありますので、その一部をご紹介します。
尚、太字等は引用者によります。
【違法であると判断された事例】
東京地判令和6年3月6日LEX/DB25614186
「原告は被告が離婚していると誤信して被告と肉体関係を伴う交際を開始しているところ、原告は被告が離婚していないと認識していたならば被告と肉体関係を伴う交際を開始していなかったと認めるのが相当である。そうすると、既に離婚していると交際開始前に原告に伝えて原告と肉体関係を伴う交際を開始した被告の行為は、原告の性的関係に関する自己決定権を侵害するものとして違法性を有すると認められる。」
東京地判令和5年12月11日LEX/DB25612187
被告は本人で、口頭弁論を3回欠席したことから終結。
東京地裁は、結論として損害賠償請求を認容。
東京地判令和5年8月17日LEX/DB25610552
「認定事実(1)~(3)によれば、被告は、当時既婚者であったにもかかわらず、参加資格が独身者に限定されている本件パーティーに参加して原告と出会い、さらに、交際開始前に原告から平成30年のうちに結婚することが前提でなければ交際ができないと言われたにもかかわらず、既婚者であることなどを秘して原告と交際を開始し、同年6月9日~同年7月30日、原告と6回肉体関係を持ったことが認められる。これらの事実によれば、被告は、自身が既婚者であることを秘し、被告が独身者である旨原告に誤信させ、原告と6回にわたって肉体関係を持ったといえるから、原告の性的意思決定の自由である貞操権を侵害した不法行為が成立すると認められる。」
東京地判令和5年4月7日LEX/DB25609900
「以上の事実関係によれば、被告は、自己が既婚者であることを秘して原告に対して交際を申し込んで交際を開始した上、原告との婚姻を約束し、その後も既婚者であることを秘し続け、虚偽の事実を告げて婚姻届の提出を延期するなどし、重婚により婚姻届が受理されないことが原告に発覚するまで長期間にわたって原告との同居生活を伴う交際を継続し、その間に同居生活に関する費用及び結婚式や新婚旅行等に関する費用を原告に負担させたというのであり、このような被告の行為は原告に対する不法行為に該当することは明らかである。」
東京地判令和5年9月12日LEX/DB25612657
「原告は、〔1〕被告から配偶者がいたが離婚していると虚偽を伝えられたことにより、被告は独身であると認識して被告と交際を始め、この認識が変わることなく被告と婚姻することとし、〔2〕被告から婚姻届を提出したと虚偽を伝えられたことにより、被告と婚姻したと認識し、この認識が変わることなく二人の子をもうけた。
原告は、これらの虚偽を被告から伝えられたことを前提として、被告と性的関係を結び、二人の子をもうけるに至ったといえるから、被告の行為により、いかなる者と性的関係を結ぶか、いかなる者と子をもうけるかに係る自己決定権を侵害されたと認められる。」
東京地判令和5年2月1日LEX/DB25610419
「以上からすれば、被告は、原告Aに対し、既婚者であることなどを隠し、あたかも結婚の意思があるかのように偽って交際をしていたと認められ、これに反する被告の主張は、採用できない。
したがって、被告は、原告Aの貞操権を侵害したものとして、原告Aに対し、不法行為責任を負う。」
東京地判令和4年8月25日LEX/DB25606430
「そうすると、原告は、被告の言動が原因で、被告が独身であり、被告と婚姻することが可能であると誤信し、この誤信に基づいて被告と肉体関係を伴う交際を継続したものと認められるから、被告の原告に対する貞操権侵害が認められるというべきである。」
「被告は、原告と婚姻を前提とした交際をしておらず、原告も被告に対して婚姻を求めるなどしていないから、このような場合には不法行為は成立しないとも主張する。
しかし、貞操権(性的自由)侵害の不法行為は、婚姻を前提とした交際関係がなければ成立しないものではなく、相手方を欺罔して肉体関係を持てば成立し得るものである(どのような事実についての欺罔行為が必要かについては議論があり得るが、少なくとも、婚姻の可能性についての欺罔行為があれば十分である。)。」
※ ただし、この東京地判令和4年8月25日が述べる考え方(婚姻を前提とした交際関係でなくても不法行為は成立する可能性がある)について、次の大阪地判令和6年7月19日はこれを否定します。
【違法とは言えないと判断された事例】
大阪地判令和6年7月19日LEX/DB25621073
「原告は、独身であるとの被告の虚偽の言葉を信じて、性交渉を持ったものであり、独身であるか否かは、性交渉に応じるか否かを決める要素の一つであることからすれば、被告が独身であると偽ったことは不適切かつ不誠実な行為であることは明らかであるものの、原告と被告が婚姻を前提とした交際関係にはなく、このことをもって直ちに不法行為であるとまでは評価できない。」
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