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【裁判例メモ】マンションの売買契約において法令適合性に係る動機の錯誤が問題となった事例(錯誤を否定)

出典

東京地判令和4年3月29日判時2365号61頁

 

事案の概要

買主である原告が東京都港区の高層マンションを7億5000万円で購入したところ、マンションの免震オイルダンパー建築基準法違反等の疑いが生じたことから、マンションの売買契約には錯誤があるとして、原告が売主である被告に対して売買代金相当額の支払を求めた事案(請求棄却)。

 

担当裁判官

下澤良太裁判長(合議事件)

下澤 良太 | 裁判官 | 新日本法規WEBサイト
https://www.sn-hoki.co.jp/judge/judge1409/

 

判決文抜粋

「意思表示における同期の錯誤が法律行為の要素に錯誤があるものとしてその無効を来すためには、その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要する。そして、動機は、たとえそれが表示されても、当事者の意思解釈上、それが法律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当である(最高裁平成28年1月12日第三小法廷判決・民集70巻1号1頁参照)。」

 

「原告において、本件売買契約を締結するに際し、本件ダンパーが建築基準法等の適合性に関する疑義がないことを動機としていることが目的に表示されていたものと認めることができる。」

 

しかし、「本件マンションに用いられた部材等に法令適合性の疑義が判明した場合に、一律に本件売買契約の効力を否定することまでを共通の前提として、原告及び被告が同契約を締結したとはいえず、原告及び被告は、本件マンションに瑕疵担保責任やアフターサービスによって対応することが社会通念上著しく困難であると認められる甚大な瑕疵が存在することが事後的に判明した場合に限って契約の効力を否定することを想定して本件売買契約を締結したものと解される。」

 

そして、「判明した本件マンションの瑕疵は、本件ダンパーが建築基準法37条2号に基づき国土交通大臣が定める技術的基準に適合しないおそれがあるとの疑義が存するというものであること、本件マンション竣工後に本件ダンパー全部につき交換工事が行われ、そ
れにより、上記疑義が完全に解消されたことが認められる。そうすると、本件売買契約締結後に判明した本件ダンパーに係る上記瑕疵は、瑕疵担保責任やアフターサービスによって対応することが社会通念上著しく困難であると認められる甚大な瑕疵であったとはいえない。」

 

したがって、「本件ダンパーに建築基準法等の適合性につき疑義がないとのPの動機は、原告及び被告の合理的意思解釈上、本件売買契約の内容となっていたとは認められない」

 

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