竟成法律事務所のブログ

大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング409号室にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6926-4470、大阪弁護士会所属)

【刑事】黙秘権に関する基礎知識

今回のテーマ

今回は、黙秘権に関する基礎知識の整理をします。

特に目新しい内容はありませんが、お役に立てば幸いです。

 

 

根拠法令

黙秘権の根拠は、憲法38条1項刑事訴訟法198条2項同法311条1項です。

日本国憲法第38条
1 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 

刑事訴訟法第198条
1 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

 

刑事訴訟法第311条
1 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
2 被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。
3 陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。

 

憲法38条1項と、刑事訴訟法198条2項等の関係については次のように説明されています(更に進んだ考察としては、例えば、丸橋昌太郎「黙秘権と自己負罪拒否特権の意義について」秋吉淳一郎ほか編『これからの刑事司法の在り方』(弘文堂、2020年)172頁以下)。

憲法38条1項はその文言において、何人も自らの罪に関わりある不利益な供述を強制されない旨を定めている。これを自己負罪拒否特権と呼ぶ。それに対し、刑訴法の諸条項は、『自己の意思に反して』供述する必要がない旨や『終始沈黙』できる旨を定めている(198条2項・311条1項)。つまり、被疑者・被告人がその利益不利益を問わず一切の事柄について、包括的に沈黙できる旨を定めている。これを黙秘権と呼ぶ(供述拒否特権と呼ぶ場合もある)。そこで、黙秘権は、憲法上保障された自己負罪拒否特権を、被疑者・被告人の防御のために拡大して保障した法律上の権利だと理解できる。

 自己負罪拒否特権と黙秘権は、文言上、適用範囲も異なる。憲法38条1項は、主語が『何人も』となっており、被疑者・被告人のみならず承認についてもその適用を想定している。具体的には、自分に不利益な供述を行なう義務が、証人について免除されうる(刑訴146条参照)。これに対して、刑訴法の黙秘権に関する各規定の主語は被疑者・被告人である(198条2項・311条1項)。」*1

 

 

黙秘権の定義・内容

「法311条1項は「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」と定める(告知につき法291条2項)。これを黙秘権という(right to remain silentであり、事実を否認し積極的に虚偽を述べることはこの権利には含まれない。したがって、しばしばみかける黙否権の語は不適切である)。供述拒否権と呼ばれることもある。被疑者について上こうした規定はないが、法198条2項は、捜査機関に対する告知義務を通して、被疑者にも同種の黙秘権を認めたと解されている」*2

 

「黙秘権とは、自己に不利益な供述を強要されない権利のことをいい、憲法上保障された重要な人権です。取調べを受けた際、質問に対してすべて黙秘することもできますし、答えたい質問にだけ答えて、答えたくない質問に答えないということもできます。黙秘権は、捜査機関の不当な取調べから被疑者を守るための重要な手段です。」*3

 

「黙秘権とは『国家機関が(それが何であれ)個人に対して供述義務を課する(法律上または事実上)ことに対して、これを拒否する権利』とされている(田宮裕「被告人・被疑者の黙秘権」『刑事訴訟法講座1』〔有斐閣、1963年〕89頁。後略」*4

 

「被疑者・被告人の黙秘権は、供述の自由を包括的に保障する権利である。それゆえ、供述の内容如何に関わらず、被疑者・被告人は取調べ等の手続において、自己の意思に反して供述することを強要されない。ただし、これは、取調べ等に際して供述を求められる場面に限られるのであり(弁解録取や勾留質問も含まれる)、それ以外の訴訟手続において氏名等の法律上要求される事項の記載まで免除するものではない。」*5

 

「実務上、捜査機関は、被疑者が黙秘権を行使する意思を示した場合でも、取調べに応ずるよう『説得』するのが一般的である。また、公判において被告人が黙秘権を行使する意思を示しても、被告人質問それ自体は行われるのが通常である。しかし、これに対しては、黙秘権が行使された場合には、その時点で取調べまたは質問は中断されるべきだとする見解もある。質問等に応ずるよう「説得」することが全く許されないとまではいえないとしても、たとえば、「被告人が明確に黙秘権を行使する意思を示しているにもかかわらず、〔検察官が〕延々と質問を続けるなどということはそれ自体被告人の黙秘権の行使を危うくする」(札幌高判平成14・3・19判時1803号147頁)というべきであろう。」*6

 

「黙秘権とはコミュニケーションを終了させるという被疑者の決定が尊重される権利であり、いったん行使した権利について翻意させるような説得をすることがすでに供述の強要に当たり黙秘権侵害になるという理解を出発点に据えることが、黙秘権が保障しようとしている、被疑者がコミュニケーションするかしないかの決定権を尊重するという趣旨を最低限、無にしない弁護人立会いとはどのような形態かを判断する一つの手がかりになりうるのではなかろうか。」*7

 

 

公式サイト

※ 大変申し訳ないのですが、弊所は、無料法律相談は行っておりません

竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470

www.kyosei-law.com

 

*1:吉開多一ほか『基本刑事訴訟法1── 手続理解編』(日本評論社、2020年)110頁。

*2:三井誠『刑事手続法⑴』(有斐閣、新版、1997年)144-145頁

*3:井上侑『被疑者弁護マニュアル』(日本法令、2020年)13頁。

*4:大阪弁護士会裁判員制度実施大阪本部編『コンメンタール公判前整理手続』(現代人文社、補訂版、2010年)135頁。

*5:辻本典央『刑事訴訟法』(成文堂、2021年)137-138頁。

*6:宇藤崇ほか『刑事訴訟法』(有斐閣、第2版、2018年)20頁。

*7:渕野貴生「「新時代の刑事司法制度特別部会」と刑事立法の議論のあり方」『季刊刑事弁護76号』(現代人文社、2013年)140頁