今回のテーマ
今回のテーマは「未成年者が親権者を訴えようとする場合、特別代理人の選任が必要か?」です。
例えば、父親Aが、母親BとAB間の子C(未成年)に対して暴力を振るっていたとしてます。
この場合、母親Bと子Cが父親Aを訴えようとしても、子Cは未成年であるため、法定代理人たる親権者によらなければ訴訟行為をすることができません(民事訴訟法31条)。
(未成年者及び成年被後見人の訴訟能力)
民事訴訟法第31条 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。
ところが、両親が婚姻している場合、親権は共同で行使するのが原則です(民法818条3項)。
(親権者)
民法第818条
1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
しかし、当然ですが、上記のような例において、父親Aが、自分に対する母親Bと子Cの訴訟提起を認めるはずがありません。そのため、こうした場合、どうすれば良いかが問題となります。
【目次】
結論
実務上は、こうした場合、父親Aについて利益相反行為があるとして、母親Bが、家庭裁判所に対して、特別代理人(民法826条)の選任を申し立てることになります。
(利益相反行為)
第826条
1 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
理由
民法826条の利益相反の有無をどのように考えるかについて、判例・通説は、いわゆる外形説を採用しています。そして、今回の例のような場面は、外形上、明らかに利益相反が発生しています。
そのため、子Cが、父親Aを訴える場合、特別代理人の選任が必要となるのです。
この点について、昭和26年11月7日民事甲2132号民事局長回答は次のように述べます。
「未成年者がその親権者を相手方として訴を提起し又は調停の申立をする場合は民法826条第1項の規定による特別代理人が申し立てるのが相当である。」*1
この考え方は、現在も支持されており、例えば、能見善久=加藤新太郎『論点体系 判例民法』(第一法規、第2版、平成25年)427頁は、上記民事局長回答をそのまま引用しています。
尚、よく考えますと、特別代理人の選任申立ても訴訟行為である以上、母親Bだけでは実行できないのではないかとも考えられます。
ただ、この点については、判例(最二小判昭和57年11月26日民集36巻11号2296頁)があり、民法826条1項に基づく特別代理人の選任申立は、父母の一方が単独でできるとされています。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55161
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