今回は,皆様のご質問にご回答するというよりは,弊所の備忘録的な記事となります。
■定義
「加算税は,申告納税制度および徴収納付制度(略)の定着と発展を図るため,申告義務および徴収納付義務が適正に履行されない場合に課される附帯税である(税通65条以下)。」*1
「税法は,納税申告義務違反に対して行政罰としての加算税を課すことによって,納税申告義務の適正な履行を確保しようとしている。」*2
附帯税
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┣━ 加算税
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┣━ 延滞税
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┗━ 利子税
加算税
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┣━ 過小申告加算税
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┣━ 無申告加算税
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┣━ 不納付加算税
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┗━ 重加算税
■「正当な理由」
過少申告加算税,無申告加算税,不納付加算税のいずれにおいても「正当な理由」に基づく救済が用意されている(通則法65条4項,66条1項,67条1項)
国税通則法65条4項
第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
国税通則法66条1項
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十五の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
一 期限後申告書の提出又は第二十五条(決定)の規定による決定があつた場合
二 期限後申告書の提出又は第二十五条の規定による決定があつた後に修正申告書の提出又は更正があつた場合
国税通則法67条1項
源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長は、当該納税者から、第三十六条第一項第二号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
■判例・裁判例
「国税通則法65条4項は,修正申告書の提出又は更正に基づき納付すべき税額に対して課される過少申告加算税につき,その納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,その事実に対応する部分についてはこれを課さないこととしているが,過少申告加算税の上記の趣旨に照らせば,同項にいう『正当な理由があると認められる』場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。」
「以上のような事情の下においては,本件申告において,上告人が本件権利行使益を一時所得として申告し,本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて,真に上告人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお上告人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから,国税通則65条4項にいう『正当な理由』があるものというべきである。」
「以上のような事情の下においては,本件各申告のうち平成17年通達改正の前に旧通達に従ってされた平成15年分及び同16年分の各申告において,Aが,本件リース事業につき生じた損失のうち本件匿名組合契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして申告し,他の各種所得との損益通算により上記の金額を税額の計算の基礎としていなかったことについて,真にAの責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお同人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから,国税通則法65条4項にいう『正当な理由』があるものというべきである。
■メモ
実務上,「正当な理由」が認められることは稀有。
但し,冒頭で述べた加算税の趣旨からすれば,そこまで厳格に考える必要性は本来ない。
つまり,「正当な理由」とは,行政罰としての加算税を課すことが相当ではない事由を広く対象とするものである。
換言すれば,「正当な理由」があるからと言って,課税庁に過失があることを意味する訳ではない。
したがって,納税者が誤解に陥っており,過少申告や不納付に至る因果の流れが既に発生している場合において,課税庁がその因果の流れに何らかの形で関与したとき,特にその因果の流れを防止しうる立場にあったときは,「正当な理由」を認めて良いと考えられる。
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