竟成法律事務所のブログ

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【労働法・民法】これって「パワハラ」? 「パワハラ」って正確にはどういう意味?

今回のテーマ

パワハラ」に関する法律上の定義や、意義について簡単にまとめます。

備忘録的な記事であり、特に目新しいことはございません。

 

 

定義

実は「パワハラ」には法的な定義があります。

 

パワハラパワーハラスメント)」とは、

  1. 職場において行なわれる
  2. 優越的な関係を背景とした言動であって
  3. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

  4. その雇用する労働者の就業環境が害されるもの

をいいます。

この定義は、実務上も争いがありません*1

 

 

典型例など

パワハラの典型例は、

  1. 直接ないし間接の暴行(暴力)

  2. 言葉やメールによる人格の否定・名誉棄損・侮辱

  3. 隔離・仕事外し、仲間外し、無視(人間関係からの切り離し)

  4. 本来業務と関連性のない無意味な作業や、遂行不能の過度の業務の強要

  5. 見せしめや報復としての降格・配転

  6. ミスに対する過度の制裁

  7. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

などです*2

 

そして、やや専門的な話になりますが、パワハラとの関係で着目されるべき(保護されるべき)権利・利益を整理した場合

  1. 人格権

  2. 生命・身体の安全

  3. 名誉・プライバシー権

  4. 職場における自由な人間関係を形成する権利

  5. 知識・経験・能力・適性にふさわしい処遇を受ける権利

に大別されます*3

 

 

更に細かい要件・定義

ここからは、上述した以下の1~4の要件のうち、2~4を更に細かく見ていきます。

  1. 職場において行なわれる
  2. 優越的な関係を背景とした言動であって
  3. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

  4. その雇用する労働者の就業環境が害されるもの

 

「優越的な関係を背景」とは

この「優越的な関係を背景」とした言動という要件の内容について、厚労省の指針*42⑷は

「当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(略)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの」

と説明し、その例として職務上の地位が上位の者による言動を挙げます。

実務上、この定義に争いはありません。

 

 

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という要件について、厚労省の指針2⑸は、

「社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないもの」

と述べた上で、

「この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当である」

と説明します。
 

また、この要件を判断するに際しては、問題となる言動だけを取り上げるでは不十分であり、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」か否か正確に判断することができないと指摘されています。

 

つまり、正確な判断のためには、当事者間でどのように人間関係が構築されていたのか、言動に至る経緯はどのようなものだったのか、周囲に何人がいたのか、など諸事実の把握が重要です*5

 

 

「その雇用する労働者の就業環境が害されるもの」とは

「その雇用する労働者の就業環境が害されるもの」について、本指針2⑹は、

「当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。この判断に当たっては、『平均的な労働者の感じ方』、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。」

と説明します。

 

 

公式サイト

※ 大変申し訳ないのですが、弊所は、無料法律相談は行っておりません

竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470

www.kyosei-law.com

 

 

 

 

*1:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について(令和2年2月10日雇均発0210第1号。

*2:佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ』(青林書院、改訂版、2021年)303頁、山浦美紀ほか『裁判例・指針から読み解くハラスメント該当性の判断』(新日本法規、令和3年)27頁、君和田伸仁『労働法実務 労働者側の実践知』(有斐閣、2019年)364頁以下、旬報法律事務所『明日、相談を受けても大丈夫! 労働事件の基本と実務』(日本加除出版、2020年)226頁など。

*3:前掲・君和田365頁以下。

*4:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)。

*5:中井智子編著『ハラスメント対応の法律相談』(青林書院、2023年)13頁。