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【民法・不法行為法】慰謝料って何ですか?

■今回のテーマ

交通事故にあったとき,犯罪に巻き込まれたとき,離婚したとき,プライバシーが侵害されたときなどに,「慰謝料」という言葉が出てくることがあります。

 

ところで,この「慰謝料」とは何でしょうか?

 

というわけで,今回は,「慰謝料とは何か?」について,簡単な説明をしたいと思います。

 

 

 

■定義

伝統的には,「慰謝料」は,

精神的・肉体的苦痛の慰謝を目的とする金銭

 であると考えられ来ました*1

 

つまり,

「精神的損害とは,精神的・情緒的安定が失われたこと(苦痛・怒り)による損害である」*2

と伝統的には考えられており,「慰謝料」とは

「精神的苦痛に対して,金銭を支払うことで,その苦痛を緩和する」*3

ものと伝統的には考えられてきたわけです*4

 

また,現在も,概説的な説明としては,この説明で足りる場面が少なくないと思われます。

 

もっとも,現在の裁判例・学説は,この伝統的考え方を全面的に支持しているわけではありません。

 

そもそも,現在の学説では,「精神的損害」という用語を使うことは少なくなっています。

というのは,民法第710条で賠償が認められる損害の中には,法人の名誉毀損における「無形の損害」のように,「精神的損害」とは解しがたいものが存在するからです*5

 

例えば,債権法や不法行為法を専門の1つとされる潮見佳男先生は,次のように述べられます*6

債務不履行不法行為の結果,債権者(被害者)に生じた財産的に不利益を財産的損害といい,非財産的な結果または精神的苦痛を非財産的損害(債権者が自然人である場合には,慰謝料という)という」

 

「財産的損害と非財産的損害の区別につき,被侵害法益に 着目して,財産に対して加えられた損害を財産的損害,身体・自由または名誉に対して加えられた損害を非財産的損害と説明する見解もかつて主張されたことがあるが,現在これを支持するものはない。というのは,財産的な法益(たとえば,所有権)の侵害から財産的損害(物的損害)および非財産的損害が生じ,逆に非財産的な法益(たとえば,生命・身体その他の人格や自由)の侵害からも財産的損害(人的損害)がおよび非財産的損害が生じうるからである」 

 

 

 

■慰謝料の計算の仕方

慰謝料の算定方法に関する判例理論は古くから構築されており,一貫して,裁判所が諸般の事情を考慮して裁量によって算定することができ,算定の根拠を示す必要はないとしています*7

 

平成に入ってからも,判例最三小判平成9年5月27日民集51巻5号2024頁)は,この考え方を踏襲しています*8

 

最高裁は,この判決において,次のように述べました(太字は引用者によります。)。

「また、名誉毀損による損害について加害者が被害者に支払うべき慰謝料の額は、事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情を斟酌して裁判所が裁量によって算定するものであり、右諸般の事情には、被害者の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価が当該名誉毀損以外の理由によって更に低下したという事実も含まれるものであるから、名誉毀損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたという事実を斟酌して慰謝料の額を算定することが許される。」

 

学説でも,次のように指摘されています*9

「慰謝料額は,裁判官の裁量的判断によって決定される。すなわち,『事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情を斟酌して裁判所が裁量によって算定する』とされる(最判平9・5・27民集51巻5号2024頁)。過去の裁判例では,そうした場合の考量要素として,被害者や加害者の年齢,学歴,職業,資産,収入,社会的地位,不法行為の態様や動機等が挙げられている。さらに,個々の事案においては,これらに限定されない事情が考慮されている。その意味では,裁量的判断の基礎となる事情は多岐にわたることになるが,そうした多岐にわたる事情が,それぞれどのような意味で考量されるのかについて,厳密に示されているわけではない。」

 

「なお,実際の裁判においては,それぞれの事件類型,侵害の内容に応じてすでに蓄積された判断を参照として慰謝料額が決定されており,一定の定額化の傾向が認められる。特に,死亡や負傷など,不利益についてのある程度の定型化が可能なものについては,こうした定額化は比較的容易である。その場合には,客観的な被害の態様によって慰謝料額が原則として決まり,当該事案における個別事情は修正要素として機能することになる。」

 

 

  

■公式サイト

※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません

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*1:手元の文献を挙げれば,例えば,藤岡康宏ほか『民法Ⅳ 債権各論』(有斐閣,第3版,2005年)359頁。

*2:平井宜雄『債権各論Ⅱ 不法行為』(弘文堂,部分補正,平成6年)77頁。

*3:窪田充見編『新注釈民法(15) 債権(8)』(有斐閣,平成29年)866頁〔窪田充見〕。

*4:念のために説明いたしますと,ここで言う「精神的苦痛」とは,主観的なものではなく,不法行為に対して損害賠償を認めるべき場合に,その根拠として伝統的に掲げられているものに過ぎません。この点については,近藤崇晴 「新聞記事による名誉毀損によって損害の発生する時期等」『最高裁判所判例解説 民事篇 平成9年度(中) 』643頁参照。

*5:前掲・窪田866頁。

*6:潮見佳男『新債権総論Ⅰ』(信山社,2017年)446頁。

*7:大判明治36年5月11日刑録9輯745頁,大判明治43年4月5日民録16輯273頁,最一小判昭和33年2月7日集民25号383頁等。

*8:余談ですが,この事件の原告は,いわゆるロス疑惑の被告人でした。

*9:前掲・窪田884頁。