竟成法律事務所のブログ

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仮想通貨の概要 ――仮想通貨に関する法的問題シリーズ01

■はじめに

弊所の代表弁護士山田は,ご縁があって,コインチェック被害対策弁護団の幹事を務めております。

https://www.ccbengo.jp/

 

この関係で,仮想通貨に関する法律問題や,それに関連する技術的な問題(といっても後者はあくまで基礎的なものですが)について,第29回日本弁護士連合会夏期消費者セミナー等,いくつかの場所でお話をさせていただきました

 

つきましては,これらのお話の一部を,順次,このブログで公開させていただこうかと思います。

 

一般の利用者の方にとっても,事業者の方にとっても,お役に立てば望外の幸せです。

 

■仮想通貨とは何か

 仮想通貨(暗号通貨 "crypto currency" とも呼ばれます。)について,その実態に即して端的に述べれば,

 

  1. 国家の裏付けがなく(したがって,中央銀行などの公的管理主体がなく*1
  2. インターネットを通じて流通する
  3. 決済手段

 

です*2

 

仮想通貨の代表例は「ビットコイン」です。

 

もっとも,周知のとおり,仮想通貨は価格変動(ボラリティ)が非常に大きくなっています。

これは仮想通貨に対する評価が定まらず,流通量も少ないことが原因の1つではあるですが,最大の理由は,仮想通貨が決済手段ではなく,投資対象として認識されているという点にあります。

 

■資金決済法上の定義

 わが国の法令では,資金決済に関する法律2条5項において,「仮想通貨」について,次のように,定義が定められています(次のいずれかに当たれば同法上の「仮想通貨」に該当します。)。

資金決済法第2条5項

この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

 まず,同条項1号は,「ビットコイン」,「イーサリアム」など「仮想通貨」と聞いて通常思い浮かぶものを対象としています。

 

これを「1号仮想通貨」などと呼ぶことがあります。

 

注意すべきは,1号の定義では,ブロックチェーンなどの技術の使用が要件となっていないという点です。

換言すれば,1号の定義は世間一般に言われる「仮想通貨」よりも広くなっています。つまり,金融商品などもこの定義に当たる可能性があります。

そのため,実は,定義としては精密とは言い難いものです。

 

このような広範な定義が採用された理由は,資金決済法を仮想通貨に対応させるための改正が,「ビットコインなどを念頭にマネロン抑止の観点から立法された」ことにあります*3

 

 

次に,同条項2号は,条文の文言だけからすると分かりにくいのですが,要するに,

 

  1. 物品やサービスの購入には利用できないが
  2. 仮想通貨との交換ができるもの

 

を対象としています。

 

具体的にはICOで発行される「トークン」などが2号の定義に当たります。

これを「2号仮想通貨」と呼ぶことがあります。

 

別の機会に申し上げるように,ICOはトラブルになりやすいケースです。

その意味で2号の定義も非常に重要です。

 

 

つづく 

 

 

■公式サイト

※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません

竟成法律事務所
TEL 06-6926-4470

http://milight-partners.wix.com/milight-law/contact

 

コインチェック被害対策弁護団 
https://www.ccbengo.jp/

*1:パブリック型の場合。プライベート型 or クローズド型の場合はこの限りではありません。

*2:岡田仁志ほか『仮想通貨 技術・法律・制度』(東洋経済新報社,2015年)3頁を参考にしています。

*3:長野聡「仮想通貨と通貨をめぐる法規制の一試論(上)」金法2092号(2018年)37頁脚注7,堀天子『実務解説 資金決済法』(商事法務,第3版,2017年)41頁,森田宏樹「仮想通貨の私法上の性質について」金法2095号(2018年)15頁脚注1