■今回のテーマ
遺産分割のご相談のときに,時々受ける質問の1つに「葬儀費用は,遺族全員がそれぞれ分担すれば良いのですか,それとも,喪主が全額負担するのですか?」というものがあります。
というわけで,今回のテーマは「葬儀費用の負担者」です。
■喪主が負担するという見解が有力です
「葬儀費用を誰が負担するのか?」という問題は,昔から色々と議論されています。
なぜなら,葬儀費用の負担者に関する法律上の規定が存在しないからです。
そのため,喪主が負担するという見解,相続人全員が負担するという見解,相続財産から支払うという見解など,様々な見解が主張されてきました。
ただ,最近は,葬儀費用は喪主が負担すべき,とする見解が有力です。
例えば,裁判官による研究会の報告書では次のように述べられています。
「葬儀費用については,喪主がこれを負担すべきであり,当然に相続財産からの支出が許される性質のものとはいえないとする理解が一般的ではないかと思われる」*1
また,上記報告書が指摘する裁判例は,次のように述べています(太字は引用者によります。)。
「葬儀費用とは,死者の追悼儀式に要する費用及び埋葬等の行為に要する費用(死体の検案に要する費用,死亡届に要する費用,死体の運搬に要する費用及び火葬に要する費用等)と解されるが,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担し,埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。」
「なぜならば,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式を行うか否か,同儀式を行うにしても,同儀式の規模をどの程度にし,どれだけの費用をかけるかについては,もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し,実施するものであるから,同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であり,他方,遺骸又は遺骨の所有権は,民法897条に従って慣習上,死者の祭祀を主宰すべき者に帰属するものと解される(最高裁平成元年7月18日第三小法廷判決・家裁月報41巻10号128頁参照)ので,その管理,処分に要する費用も祭祀を主宰すべき者が負担すべきものと解するのが相当であるからである。」*2
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