竟成法律事務所のブログ

大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング409号室にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6926-4470、大阪弁護士会所属)

認知症事件(JR東海事件)最高裁判決に関する簡単な解説とコメント

■今回のテーマ

平成28年3月1日,最高裁は,認知症に罹患した高齢者が起こした鉄道事故事件に関する損害賠償請求について,JR東海の請求を棄却する内容の判決を出しました。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85714

 

認知症JR事故、家族に監督義務なし 最高裁で逆転判決:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASJ2X0VW5J2WUTIL028.html 

「一審・名古屋地裁判決は妻と長男に請求全額の賠償を命じ、二審・名古屋高裁判決は妻に約360万円の賠償を命じていた。」

 

 

この事件については,従来からいくつもの報道が為されており,社会的に注目されていました。

また,最高裁判決を受けて,法律家の方々もTwitterで呟かれており,実務上も重要な判決であることが分かります。

togetter.com

 

 

というわけで,今回は,この認知症事件(JR東海事件)に関する簡単な解説をしたいと思います。

 

今後,研究者の先生方による詳細な判例評釈や,担当調査官による解説が出ると思います。本格的かつ精確な議論については,それらのご論考をご参照ください。

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簡易裁判所判事の釈明権の行使態様が違法であるとされた事例

■今回のテーマ

兵庫県弁護士会所属の弁護士・蔭山文夫先生のブログで,以下のような記事が紹介されていました。

blog.livedoor.jp

 

詳細については,上記ブログをご覧いただきたいのですが,要するに,簡易裁判所判事の釈明権の使い方がおかしい,ということで,国家賠償法に基づく損害賠償を請求し,それが一部認められたという事案です。

 

蔭山先生は,上記ブログに判決書をアップされているのですが,その中でも,簡易裁判所判事の釈明権行使の違法を認定した部分を以下で引用し,ご紹介させていただきます。

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金融庁が「金融行政モニター」を設置しました。

報道されているとおり,金融庁は,2016年1月29日から「金融行政モニター」という窓口を設置しました。

金融行政モニター制度を創設、外部の意見で質的向上を=金融庁 | Reuters
http://jp.reuters.com/article/aso-financial-opinion-idJPKCN0V4053

麻生太郎金融担当相は26日の閣議後会見で、市中の金融機関から見ると金融庁には『金融処分庁』というイメージが残っていると思うとし、『提言したくても、監督官庁に直接ものが言いにくいとちゅうちょする人もいるのではないか』と指摘した。

 

金融行政モニターは,平成27事務年度(金融庁の事務年度は7月始まり翌年6月終わりです)金融行政方針で述べられていた制度です。

金融行政モニター受付窓口について:金融庁
http://www.fsa.go.jp/monitor/gyouseimonitor.html 

 

誤解を恐れずに言えば,金融行政モニターとは,要するに,金融庁の監督下にある金融機関の方々や関係者の方々も,金融庁の顔色をうかがわずに率直に金融庁に対して意見や批判を述べて欲しい。」という制度です。

 

言い換えれば,金融行政モニターは,金融機関に対する不満や苦情等を直接の対象としているわけではない,ということです。

 

ただし,「金融機関の問題点や違法行為について金融庁に『適切』に情報提供したにもかかわらず,金融庁は迅速に動いていない。金融庁の情報収集態勢や,情報活用態勢に問題があるのではないか。」という形であれば,それは金融行政の問題を指摘していることになりますから,金融行政モニターの対象になる……と考えられます。

 

 

金融庁のサイトは,分かりにくい構成になっているのですが,金融機関に関する情報等を金融庁に提供する場合の窓口はこちらです。

金融モニタリング情報収集窓口への情報
https://www.fsa.go.jp/kensa/

 

  

 

■公式サイト

お問合せはお電話 or 公式サイトの送信フォームからどうぞ!

竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470

http://milight-partners.wix.com/milight-law#!contact/c17jp

 

【メモ】勾引とは何か,どのような手続か

■今回のテーマ

このような報道に接しました。

“号泣元県議”野々村被告、強制出廷へ…あす初公判、神戸地検係官が自宅へ 勾引状執行へ手続き着手  - 産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/160125/wst1601250034-n1.html

 

News Up “号泣”元県議 出廷に向けた奥の手 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160125/k10010385101000.html

 

 

被告人に対して勾引が為されることは,珍しいです。

自分が刑事弁護を担当していた被告人の方が勾引された経験がある弁護士は少ないと思います。

 

というわけで,今回は,「勾引」に関する基本的な知識をご説明したいと思います。

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公正証書による遺言が無効とされた諸事例(裁判例)のご紹介

■今回のテーマ

2016年1月24日,次のような判決があったという報道に接しました。

家政婦は見た! 「全遺産はあなたに」の遺言有効 3000万相当持ち去った実娘2人敗訴(1/4ページ) - 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/160124/afr1601240011-n1.html

「平成23年に死去し「遺産は全て家政婦に渡す」としていた資産家女性=当時(97)=の遺言に反し、実娘2人が遺産を不当に持ち去ったとして、家政婦の女性(68)が遺産の返還を実娘側に求めた訴訟の判決が東京地裁であった。」

 

ところで,遺言書は自分(自筆)で作成することができますが,方式が厳格に決まっています。方式に反すると,その遺言は無効になる危険性が高いです。

 

そのため,確実な遺言書を作成されたい方は,通常,公正証書による遺言を用います。

遺言 日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/yu.html

 公正証書遺言とはどのようなものですか? そのメリットとデメリットを教えて下さい。

 公正証書遺言は,遺言者が,公証人の面前で,遺言の内容を口授し,それに基づいて,公証人が,遺言者の真意を正確に文章にまとめ,公正証書遺言として作成するものです。
 遺言者が遺言をする際には,さてどんな内容の遺言にしようかと思い悩むことも少なくないと思いますが,そんなときも,公証人が親身になって相談を受けながら,必要な助言をしたりして,遺言者にとって最善と思われる遺言書を作成していくことになります
 公証人は,多年,裁判官,検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家で,正確な法律知識と豊富な経験を有しています。したがって,複雑な内容であっても,法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし,もとより,方式の不備で遺言が無効になるおそれも全くありません。公正証書遺言は,自筆証書遺言と比べて,安全確実な遺言方法であるといえます。
 また,公正証書遺言は,家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので,相続開始後,速やかに遺言の内容を実現することができます。さらに,原本が必ず公証役場に保管されますので,遺言書が破棄されたり,隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。(後略)

 

公正証書による遺言が無効とされることは「ほとんど」ありません。

しかし,実際の裁判例では,公正証書による遺言が無効となることもあります。

 

と言うわけで,今回は,公正証書による遺言が無効となった最近の事例をいくつかご紹介したいと思います(尚、弊所では公正証書遺言の事件を複数取り扱っておりますが、以下の裁判例は弊所が受任した事案ではありません。あくまで過去の裁判例のご紹介です。)。

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【メモ】司法修習生時代の手帳から

■今回のテーマ

片付けものをしていたら,司法修習生時代の自分のメモ帳が出てきました。

私は,修習中は常時,小さくてとても薄いメモ帳を携帯していて,教えていただいたことや分からなかったことを書き留めていました。

今,再読してみて改めて勉強になったこともあれば,正直,「それはちょっと違うのではないか」と思うこともあります(笑)。

 

いずれにせよ,修習生の方に役に立つ「かも」しれませんので,私がご教示いただいたことのうち,一部をご紹介させていただきます。

但し,情報を羅列しているだけで,特に系統立っているわけではありません。ご容赦ください。

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『FinTech革命』感想&コメント(追記あり)

■今回のテーマ

弊所の代表弁護士山田が、年末年始に拝読した書籍の1つに日経BPムックの『FinTech革命 テクノロジーが溶かす金融の常識』があります。 

FinTech革命(日経BPムック)

FinTech革命(日経BPムック)

 

弊所の代表弁護士山田は、財務省近畿財務局に2年間出向し、金融証券検査官として金融庁所管業務の仕事をしておりました。その関係もあって、弊所は金融法を重点的に取り扱っており、本書についても興味深く拝読しました。

 

また、金融庁も、『平成27年度 金融行政方針』においてFintechについて言及しており、注目している旨を述べています。*1

「FinTech とは、金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語であり、主に、IT を活用した革新的な金融サービス事業を指す。特に、近年は、海外を中心に、IT ベンチャー企業が、IT 技術を武器に、伝統的な銀行等が提供していない金融サービスを提供する動きが活発化している。」

金融庁としては、我が国が、FinTech の動きに速やかに対応し、将来の金融ビジネスにおける優位性を確保するため、民間部門と協働しつつ、海外事例の調査や内外の担い手との対話等を通じて FinTech の動向を出来る限り先取りして把握していく。その上で、利用者保護等の金融行政上の課題と両立させつつ、将来の金融業・市場の発展と顧客利便性の向上につなげていくとともに、内外の専門家の知見を積極的に活用し、技術革新が我が国経済・金融の発展につながるような環境を整備する。」 

――金融庁『平成27事務年度 金融行政方針』2頁、27頁。

  

というわけで、今回は、本書の中で印象的だった部分や刺激的だった部分、興味を惹かれた部分について、簡単に紹介、要約、コメントをしたいと思います。

 

尚、以下の引用部分のページ番号は、特に断りがないかぎり、本書のページ番号を指します。

*1:ちなみに、松井証券社長の松井道夫氏は、2016年の年頭のご挨拶の中で、FinTechの本質について「金融分野でのIT活用というにすぎません。」と述べられた上で、「FinTechの進展は、大量の人員を擁してサービスを提供している伝統的金融ビジネスをDisrupt(破壊)するイノベーションに繋がります。」と指摘されています。http://www.matsui.co.jp/company/matsui/2016.html 

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