竟成法律事務所のブログ

大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング409号室にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6926-4470、大阪弁護士会所属)

【民法】第三者に対する離婚自体慰謝料に関する最高裁判決について(追記あり)

■今回のテーマ

平成31年(2019年)2月19日に最高裁第三小法廷が出した以下の判決について,簡単にご説明いたします。

 

この判決は,一定の前提知識がないと誤解されてしまう危険性があると考えられます。不正確な報道が為されてしまうのではないかと危惧しています。

 

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88422

判示事項
「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」

 

 

 

■お伝えしたいこと

今回の判決は,不倫や浮気をした者が,不倫や浮気の相手方の配偶者に対して損害賠償責任をどんな場合でも一律に負わない(慰謝料を支払わなくて良い)としたものではありません。

 

つまり,夫A,妻B,妻の浮気相手Cがいた場合,浮気相手Cが夫Aに対して,どのような場合でも慰謝料を支払わなくて良いとした判決ではありません。

夫A ―― 妻B ――浮気相手C

 

以下,簡単にご説明します。

 

【追記】

尚,判例タイムズ1461号(2019年)28頁以下に,匿名解説が掲載されましたので,以下ではいくつか追記をしています。

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【刑事】有罪を認定した裁判員裁判の原審判決に大きな問題があるとして判決を破棄して無罪とした事例

■今回のテーマ

Twitter上で,深澤先生による以下のようなご指摘がありました。

 

 

 

というわけで,今回は,この判決をご紹介いたします。

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仮想通貨の概要 ――仮想通貨に関する法的問題シリーズ02

■仮想通貨の種類

仮想通貨の代表例は「ビットコイン」ですが,その他にも「イーサリアム」,「リップル」,「イオス」,「ネム」など,様々な仮想通貨が存在します。

 

仮想通貨の種類は1500を超えており,中にはほとんど誰も聞いたことのないような仮想通貨も存在します。

 

そのため,「聞いたことがない」からと言って,その仮想通貨は「存在しない」ですとか,「詐欺だ」とは直ちに言えない状況です。


もっとも,仮想通貨の代表的存在はやはり「ビットコイン」です。

ビットコイン以外の仮想通貨は「アルトコイン」(alt coin。"Alternative coin"の略称)と呼ばれています。

 

 

■仮想通貨の特徴

円やドルのような通常の通貨(法定通貨)の場合,中央銀行という管理主体が存在し,この主体が流通や供給量を管理しています。

 

他方,仮想通貨*1では,通常,管理主体が存在しません。

 

そのため,仮想通貨では,一般に,暗号技術やブロックチェーンなどのプログラム(コンセンサス・アルゴリズム)などが採用されており,これらの技術やプログラムによって取引の信頼性や安全性を確保する仕組みとなっています*2

 

ところで,上述したように,仮想通貨は,インターネットを通じて流通します。


当然ながら,仮想通貨は,電子化された決済手段の一種です。ただ,この決済手段の電子化というアイディア自体は従来から存在しており,目新しいものではありません 。

 

また,ネット上での取引では,クレジットカードによる決済が既に広く行われています。Amazonを思い出してください。

 

言い換えれば,仮想通貨の特徴は,電子化やネットワーク流通性にあるわけではありません。

 

更に,少なくともビットコインに用いられている技術は,いわゆる「枯れた技術」*3であり,技術それ自体が目新しい訳ではありません。

仮想通貨に通常使用されている暗号技術も一般的なものです。

 

 

むしろ,仮想通貨の嚆矢であるビットコインが登場した際に世間の耳目を集めた理由は,その基盤となっているブロックチェーンというアイディアにあります 。

 

これは,分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology。DLT)の一種で,誰が,何を,いくら持っているかという取引情報を,ネットワークの参加者全員で共有し,相互に分散して,保管・維持するという仕組みのことです。


ビットコインをはじめとする仮想通貨に対する評価は論者によって大きく異りますが ,この分散型台帳技術については「次世代のコア技術」 *4などと一般に高く評価されています。

 

実際に各国の中央銀行や金融機関はブロックチェーンの研究を行っています。

また,国際貿易の分野では,船荷証券ブロックチェーンで管理しようとする研究も為されています。更に,スマートコントラクトと呼ばれる自律的契約の基盤としてもブロックチェーンは注目されています

 

このような状況ですから,ビットコインを理解するためには,このブロックチェーンを理解することが必要不可欠であると言って過言ではありません。

  

 

 

■公式サイト

※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません

竟成法律事務所
TEL 06-6926-4470

http://milight-partners.wix.com/milight-law/contact

 

コインチェック被害対策弁護団 
https://www.ccbengo.jp/

*1:オープン型を前提としています。

*2:代表的なコンセンサス・アルゴリズムに関する簡潔な説明として中島真志『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(新潮社,2017年)133-138頁。

*3:以前から存在する技術で,不具合が出尽くし,かつ,対処されているため,安定して使える技術。

*4:前掲・中島117頁。

仮想通貨の概要 ――仮想通貨に関する法的問題シリーズ01

■はじめに

弊所の代表弁護士山田は,ご縁があって,コインチェック被害対策弁護団の幹事を務めております。

https://www.ccbengo.jp/

 

この関係で,仮想通貨に関する法律問題や,それに関連する技術的な問題(といっても後者はあくまで基礎的なものですが)について,第29回日本弁護士連合会夏期消費者セミナー等,いくつかの場所でお話をさせていただきました

 

つきましては,これらのお話の一部を,順次,このブログで公開させていただこうかと思います。

 

一般の利用者の方にとっても,事業者の方にとっても,お役に立てば望外の幸せです。

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【民法・不法行為法】慰謝料って何ですか?

■今回のテーマ

交通事故にあったとき,犯罪に巻き込まれたとき,離婚したとき,プライバシーが侵害されたときなどに,「慰謝料」という言葉が出てくることがあります。

 

ところで,この「慰謝料」とは何でしょうか?

 

というわけで,今回は,「慰謝料とは何か?」について,簡単な説明をしたいと思います。

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弁護士に対する懲戒請求が違法であるとして損害賠償が認められた事例

■今回のテーマ

弁護士の佐々木亮先生北周士先生に対する懲戒請求が話題になっています。

余命ベギラゴン ~懲戒請求を煽る人、煽られる人~ - Togetter
https://togetter.com/li/1221467

 

というわけで,今回は,弁護士に対する懲戒請求が違法なものであるとして損害賠償責任が認められた判例・下級審裁判例をいくつかご紹介したいと思います。

 

尚,紙幅等の関係上,橋下徹さんの関係で話題となった最判平成23年7月15日民集65巻5号2362頁の紹介は省略していますが、この判例の存在が本件における損害賠償の否定に「直結」することはないと考えられます。*1 *2

*1:もちろん,この判例が本件と全く無関係というわけではありません。むしろ,本件との関係でこの判例は問題になり得ると考えられます。ただ,この事件の被告は橋下徹さんで,橋下さんご自身は懲戒請求を行っていません。つまり,この事件で問題になったのは橋下徹さんによる「呼びかけ行為」であり,表現行為が問題となっています。他方,今回の件は,懲戒請求を行った方々が被告になるようですので,上記の最判平成23年7月15日は当然には本件に及ばないと考えられます。

*2:この点について,上記最判平成23年7月15日を担当された中島基至最高裁調査官は次のように述べられます。「懲戒請求に係る不法行為該当性の判断基準は,原判決が引用する前掲最三小判平成19・4・24(略)が示すところであり,1審判決が説示するとおり,虚偽の懲戒請求をすれば虚偽告訴罪(刑法172条)という刑事罰が科されることになる。懲戒請求の上記性質から,本判決と平成19年判例との関係も問題となろうが,本判決は表現行為の違法性が問題とされる事案であるのに対し,平成19年判例懲戒請求自体の違法性が問題とされる事案であるという点で異なるため,平成19年判例の射程は,本件事案には直ちには及ばないと理解されるべきであろう。」,「ただし,呼び掛け行為が,視聴者の主体的判断を妨げて懲戒請求をさせるような『煽動』にまで及ぶような場合など,懲戒請求を呼び掛けた者が懲戒請求の行為主体であると規範的に評価できるような場合には,平成19年判例が説示する趣旨を踏まえ,上記呼び掛け行為の不法行為該当性が検討される余地もあり得るように思われる。また,懲戒請求自体が不法行為を構成するような場合には,当該懲戒請求を呼び掛ける行為は,幇助犯,教唆犯として不法行為責任を問われることもあり得るであろう。」(以上につき「弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為が、不法行為法上違法とはいえないとされた事例」『最高裁判所判例解説 民事篇 平成23年度(下)』〔法曹会〕578頁)。

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【民法】宴会の予約をキャンセルしたらキャンセル料金を必ず支払わなければならない?

■今回のテーマ

早いものでもう12月です。そして,12月と言えば,「忘年会」ということで,世の飲食店にはたくさんの宴会の予約が入っていると思います。

 

それに伴って,宴会の予約のキャンセルも少なからず発生しているはずです。

 

余裕をもって,キャンセルの連絡がお店に為された場合は問題は少ないのですが,前日とか当日のキャンセルの場合,予約人数が多いときは,お店としてはたまったものではありません。

 

 

では,こうしたとき,お店は,お客様に対して,キャンセル料を請求できるのでしょうか?

 

というわけで,今回のテーマは,「お客様に対するキャンセル料請求の可否,金額」です。

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