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【刑訴】逮捕が許されるのはどういう場合?

■今回のテーマ

法律上,逮捕はどんな場合にすることが許されるのか。

今回は,この点について,簡単にご説明いたします。

 

但し,今回は,通常逮捕のみを取り扱います。現行犯逮捕と緊急逮捕は取り上げません。

 

 

■そもそも逮捕って何?

法律家でない方々であっても,「逮捕」がどんなものであるかは,テレビドラマや映画,小説・マンガなどで,だいたいのイメージがあると思います。

 

ただ,改めて,「逮捕とは何か?」と質問されて即答できる一般の方は少ないと思います。この点について,文献は次のように説明します。

「現行法における『逮捕』は,被疑者の身体を拘束して指定の場所に引致し,その効果として比較的短期間の留置を認めるものとして構成されている。」*1

 

「逮捕とは,被疑者の身体の自由を拘束し,引き続き比較的短期間その拘束の状態を続けること(留置を含む。)をいう」*2

 

そして,逮捕には,

  1. 通常逮捕
  2. 現行犯逮捕
  3. 緊急逮捕

の3種類があります。今回取り上げるのは,このうちの「通常逮捕」です。

 

 

■通常逮捕って何?

では,次に,「通常逮捕」とは何でしょうか?

先程の文献は次のように説明します。

「通常逮捕とは,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき,裁判官のあらかじめ発する逮捕状により,被疑者を逮捕すること」*3

 

この定義にも書かれているように,通常逮捕を行うためには,裁判官が発する「逮捕状」という令状が必要です。

 

では,法律上,どのような場合に逮捕状が発付される(=逮捕が許される)のでしょうか?

 

 

■法律上,どんな場合に通常逮捕ができるの?

通常逮捕については,刑事訴訟法199条などに定めがあります。

刑事訴訟法第199条
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

 検察官又は司法警察員は、第1項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

 

先程申し上げたように,通常逮捕を行うためには,裁判官が発する逮捕状が必要です。

 

そして,裁判官が逮捕状を発付するためには,

  1. 逮捕の理由
  2. 逮捕の必要

という2つの要件を満たす必要があります(刑事訴訟法第199条刑事訴訟規則第143条の3*4

 

このうち,逮捕の理由とは,刑事訴訟法第199条2項が定める「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことです。これは,「特定の犯罪の嫌疑を肯定できる客観的・合理的な根拠」を意味します*5

 

言い換えれば,この逮捕の理由とは,逮捕することの許容性を意味します。

 

 

しかし,逮捕は,上述のとおり,被疑者の身体の自由を拘束する重大な国家作用ですから,許容性があるからと言って,いつでも逮捕をすれば良いというものではありません。

 

そのため,法は,逮捕の必要性がある場合に限って,裁判官が逮捕状を発付できるようにしました。

この点については,刑事訴訟規則143条の3に定めがあります。

(明らかに逮捕の必要がない場合)
第143条の3
 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。 

 

 

刑事訴訟規則143条の3に書かれているように,①被疑者の年齢,②境遇,③犯罪の軽重などの「諸般の事情」をベースに考えて,【逃亡するおそれ】【証拠を隠滅するおそれ】もない場合「等」には,この逮捕の必要性が否定されます*6

 

とはいえ,この規定だけでは,具体的なイメージがつかみにくいと思います(笑)。

 

この点について,裁判官や検察官は次のように説明します。

「東京簡易裁判所において,近時,逮捕の必要性が否定された事例としては,事案が比較的軽微(迷惑防止条例違反,公然わいせつ,暴行,器物損壊等)であり,かつ,①被疑者が定職に就くか家族と同居するなどして安定した境遇にある場合,②被疑者が高齢または燃焼で逮捕により不利益が大きい場合,③犯行発覚から相当期間が経過し,その間に逃亡及び罪証隠滅が行われていない場合などがある。」*7

 

「また,この『虞がない』ということは,明らかに逮捕の必要性がないと認められる場合の例示であるから,『虞がない等』の『等』とは,この虞がない場合と並んで,明らかに逮捕の必要がない場合,すなわち,逃亡又は罪証隠滅のおそれがないとはいえないが,逮捕することが健全な社会常識に反すると認められる場合を指すのである(略)。これらの判断は,刑訴規則143条の3に規定する被疑者の年齢等を総合的に考察して,なされるものであり,したがって,その結果,逃亡又は罪証隠滅の虞がないとはいえないが,事案が軽微であるなどの事情により,逮捕の必要性が否定される場合のあることも,当然である。」*8

 

 

 ■逮捕の必要性に関する注意点 ――逮捕は避けられるなら避けるべき

 通常逮捕の要件としての逮捕の必要性に関する説明としては以上のとおりですが,注意すべき点が1つあります。

 

それは,逮捕しなくても捜査に支障が生じない場合には,逮捕をすべきではないということです。

 

逮捕とは,身体の自由に対する強烈な制限です。

だからこそ,わが国の刑事訴訟法は,中立公正な裁判官による逮捕状発付を通常逮捕の要件としました。

 

この観点からすれば,逮捕せずとも捜査が行えるのであれば,逮捕はすべきではありません。

 

そもそも,裁判所による有権的判断が確定していない段階では,国民は誰しも無罪推定を受けます。

したがって,被疑者であっても,できる限り,他の国民と同様の権利・利益が保護されなければなりません。また,逮捕は,被疑者に対する制裁のための手段ではありません。

 

この点を,ゆめゆめ忘れないようにする必要があります。

 

 

 

■公式サイト

※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません

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*1:松本時夫ほか編著『条解 刑事訴訟法』(弘文堂,第4版増補版,2016年)381頁~382頁。

*2:三浦正晴=北岡克哉『令状請求の実際』(立花書房,改訂版,平成14年)8頁。

*3:前掲・三浦=北岡8頁。

*4:尚,これらの要件に関する裁判官による簡潔な説明として,棚橋知子「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」別冊判タ34号92~93頁,小松京子「逮捕の必要性」別冊判タ34号94~95頁があります。

*5:前掲・松本382頁

*6:尚,後掲の引用文献も指摘していますが,刑事訴訟規則143条の3の「等」には特別な意味があります。

*7:前掲・小松95頁。

*8:前掲・三浦=北岡13頁。