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【民法・不法行為法】共同不法行為って何?

■今回のテーマ

今日は,共同不法行為に関する基礎的な解説をしたいと思います。

 

あくまで,基礎的な解説に留まりますので,本格的に学ばれたい場合は,脚注で言及している書籍を御覧いただければ幸いです。

 

 

 

■条文

共同不法行為については,民法第719条が定めています。

(共同不法行為者の責任)
第719条
1 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

 

 

 

■立法趣旨

民法が,第719条において,共同不法行為を定めた趣旨については,伝統的には,次のように説明されます。

「ごくおおざっぱな説明をすれば,複数の者が関与した不法行為において,加害者らの連帯責任を規定するものであり,それによって,被害者の救済を図るものであろということになろう(そうした説明がなされることは多い)。」*1

 

また,第719条が適用される場面について,次のようにも説明されます。

現代社会においては,集団で被害者に暴行を加えた場合,自動車どうしの衝突事故により通行人が負傷した場合,コンビナートを更正している複数の企業の工場から排出された工場廃液によって河川流域の住民の健康が害された場合,悪質な販売グループの詐欺まがいの商法により消費者が無価値な商品・役務を高額で購入させられた場合などのように,被害者に対して複数の行為者が加害者として向き合っていることが少なくない。このような場合に,被害者は,複数の加害者を相手どって不法行為を理由とする損害賠償責任を追及していくことになる。」*2

 

 

 

■成立要件

民法第719条が定める損害賠償責任が認められるためには,伝統的には,以下の2つの条件を満たすことが必要であると考えられています*3

  1. 各行為者が,民法第709条に定める損害賠償責任を負うこと(同条の要件を満たすこと)。
  2. 各行為者について,客観的な関連共同性が認められること。

 

 

尚,この「2」で求められている「客観的な関連共同性」については,意思の共同は必要ではなく,客観的に1個の不法行為であるとみられるような関係であれば足りると伝統的に解されています(我妻説など)。

つまり,「共謀」は不要ですし,「共同していることの認識」も不要ということです*4

 

 

■効果

共同不法行為によって損害が発生した場合,「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」(民法第719条1項前段。)ことになります。

 

この「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」という条文の意義について,判例・伝統的見解は,不真正連帯債務であるとします*5

 

要するに,誤解を恐れずに言えば,①不法行為に及んだ加害者全員が,被害者に対し ,②全額の賠償責任を負う,ということです。ここでは,損害発生に対する行為者の影響力や寄与度の大小は問題となりません。

 

判例最三小判平成13年3月13日民集55巻2号328頁)も,民法第719条が問題となった事案で,次のように述べており,伝統的見解を支持しています(太字は引用者によります。)。

「被害者との関係においては,不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し,各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。」

 

「けだし,共同不法行為によって被害者の被った損害は,各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして,各不法行為者はその全額を負担すべきものであり,各不法行為者が賠償すべき損害額を案分,限定することは連帯関係を免除することとなり,共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し,これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり,損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。」

 

 

ちなみに,不真正連帯債務とは何かについては,学説上も議論があるのですが,伝統的には次のように説明されます。

「連帯債務に類似するものに,不真正連帯債務と呼ばれるものがある。連帯債務との差異は,一言にしていえば,多数の債務者間にそれほど緊密な関係がなく,債務者の1人について生じた事由(例えば免除・時効消滅・混同など)は他に影響を及ぼさないものである。従って,債権者にとって却って有利な場合がある。」*6

 

我妻先生が「債権者にとって却って有利」と述べられているのは,上述のとおり,加害者全員が全額の賠償責任を負うことになるので,被害者は,どの加害者からも損害を回収できるという点で有利,ということです。

 

但し,これは,いわゆる「焼け太り」を認めるものではありません。

例えば,加害者3名が共同して被害者に対する不法行為に及び,100万円の損害を与えたとします。

この場合,被害者が加害者に対して請求できる金額は合計で100万円です。加害者全員からそれぞれ100万円(合計300万円)をとれるわけではありません。

 

 

 また,不真正連帯債務の特徴(効果)については,次のように説明されます*7

  1. 複数の債務者が各自,債権者に対し,同一の給付へと向けられた債務を負担していて(全部給付義務),そのうちの1人が給付をすれば,すべての債務者が債務を免れる。この点では,真正の連帯債務と同じである。
  2. しかし,各債務の独立性が強いため,民法の連帯債務の絶対的効力に関する規定は,適用されない。弁済,供託,代物弁済など,債権を満足させる事由のみが絶対的効力を有する。
  3. また,複数債務者間に負担部分を観念できないから,債務者の1人が弁済しても,「負担部分に基づく求償」の問題は起こらない(「連帯債務であることを理由とした求償の問題は起こらない」と言ってもよい)。そのため,求償関係を正当化するためには,「連帯債務であること」を理由とすることができず,別の根拠を持ち出さなければならない(「連帯債務ゆえに求償できる」という理由がとおらない)。そこで,「債務者間の過失割合によって求償できる」とか,「不当利得を理由に求償できる」といった説明がされている。

 

 

 

■公式サイト

※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません

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*1:窪田充見『不法行為法』(有斐閣,初版,2007年)424頁。但し,窪田先生は,同書で,続けて,このような説明に対する批判をされています。

*2:潮見佳男『不法行為法Ⅱ』(信山社,第2版,2011年)126頁。

*3:平井宜雄『債権各論Ⅱ』(弘文堂,部分補正板,平成6年)190頁。

*4:前掲・平井190頁以下。

*5:三村晶子「1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害の一部に限定することの可否 他」『最高裁判所判例解説 民事篇 平成13年度(上) 』236頁。

*6:我妻榮『新訂 債権総論』(岩波書店,1964年)378頁。

*7:潮見佳男『プラクティス民法 債権総論』(信山社,第3版,2007年)569頁以下。