■今回のテーマ
「養子」という制度があることは皆さん,よくご存知だと思います。
では,「特別養子」という制度についてはご存知でしょうか? 「特別養子」についてはあまり知られていないのではないでしょうか。
不妊治療を超える、もう一つの選択肢――「産まなくても、育てられます」本プレゼント - 朝日新聞デジタル&w
http://www.asahi.com/and_w/articles/SDI2017020886961.html?iref=comtop_fbox_u08「『特別養子縁組』は、血のつながらない子どもを引き取り、法的にも親子となるしくみです。昨年、利用を促進する法律もできました。この特別養子縁組を希望する夫婦のほとんどが、不妊治療の経験者なのです。」
特別養子縁組とは|はじめまして、愛しています。|テレビ朝日
http://www.tv-asahi.co.jp/hajimemashite/sp_lecture/
「血のつながりなくても」元月組トップが選んだ家族の形:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL495R5XL49UTFL00M.html?iref=comtop_photo「宝塚歌劇団の元月組トップスター、瀬奈じゅんさん(44)と夫で俳優の千田真司さん(34)が不妊治療を経て、特別養子縁組で赤ちゃんを迎え、家族になった。『さまざまな家族の形が当たり前の世の中に』と願う。」
そこで,今回は,「特別養子」について,基本的な説明をしたいと思います。
■定義等
「普通の養子縁組は,養親となる者と養子となる者との間に親子関係を創設することを目的とした法律行為であり,養子縁組がなされても,養子と実方の血族との間の親族関係は当然には消滅しない。実方の親族との間に親族関係を存続させておくことは,子の福祉にとって有益なことが多い。」
「しかし,場合によっては,実方の親族との法律関係を消滅せさる方が子の福祉にとって望ましい場合もある。このような場合に備えて,民法は実方との血族と親族関係が終了する縁組の制度を設けている(817条の2第1項)。特別養子縁組という。」*1
「特別養子制度は2つの制度ないし目的に支えられている。第1に,育ててくれる親のない子の福祉という理念,第2に,実子として育てたいという養親の心情を満たすという目的である。」*2
ちなみに,この特別養子縁組という制度は,1991年に他界された医師・菊田昇先生の行動がきっかけで制定されました。世に言う「菊田医師事件」です。
菊田昇 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8A%E7%94%B0%E6%98%87
【戦後70年 東北の記憶】赤ちゃん斡旋事件(上) 「命守るため法改正を」 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/150804/rgn1508040031-n1.html「『急告、生まれたばかりの男の赤ちゃんをわが子として育てる方求む』
昭和48年4月20日、宮城県石巻市の地元紙に、小さな広告が掲載された。依頼したのは石巻市の産婦人科医、菊田昇医師=当時(46)=だった。」
【戦後70年 東北の記憶】赤ちゃん斡旋事件(下) - 産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/150805/rgn1508050006-n1.html「昭和62年9月、参院本会議で、養子と養父母の間に実の親子並みの強固な関係を認める『特別養子縁組制度』法案が可決された。満場一致だった。」
■特徴
特別養子縁組の特徴は,上述した「定義」に述べた点に基本的には尽きています。
端的に申し上げれば,特別養子縁組を行った場合,
「養親は実親からの干渉を排除することができる。最も重大な干渉は離縁による子の取戻しの要求だが,特別養子の離縁は厳格な要件のもとでのみ認められる(民817条の10)。このような処遇は養親子関係の安定をもたらし,養子の利益に資すると考えられている(民817条の7参照)。」*3
という特徴があります。
■特別養子を成立させるための条件
特別養子縁組を成立させるためには,以下の7つの要件を満たすことが必要です。
- 養親が配偶者のある者であること(民法817条の3第1項)
- 夫婦が2人とも養親になること(民法817条の3第2項。但し,いわゆる「連れ子養子」の場合は別。)
- 養親が25歳以上であること(民法817条の4。但し,例外があります。)
- 養子となる子が縁組みの申立時点で6歳未満であること(民法817条の5。但し,例外があります。)
- 実父母の同意があること(民法817条の6。実父母が親権者でなくとも同意が必要です。但し,例外があります。)
- 特別の必要性があること(民法817条の7)
- 6ヶ月以上の試験的監護期間を経たこと(民法817条の8)。
■手続
特別養子縁組を成立させるための具体的な手続については,裁判所のホームページで説明がされていますので,ご紹介いたします。
裁判所|特別養子縁組成立
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_09/
裁判所|特別養子縁組成立の申立書
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_09/
■戸籍
冒頭で述べましたように,特別養子縁組が為されると,実親&実親の血族との親族関係は終了します。この点が普通養子縁組と異なる点です。
この特徴を活かすために,特別養子縁組が為された場合,戸籍については特別な処理が為されます。
例えば,実父・太郎,実母・花子の間に,子・一郎がいたとします。
実父・太郎 ━┳━ 実母・花子
┃
子・一郎
そして,養父・ケン,養母・さくらが,子・一郎との間で特別養子縁組をしたとします。
養父・ケン ━━━ 養母・さくら
この場合の戸籍の処理は次のようになります*4。
- 子・一郎は,当然ですが,元々は,実父・太郎と実母・花子の戸籍に入っています。
- 特別養子縁組がなされますと,まず,実父・太郎と実母・花子の戸籍から,子・一郎が除かれます。
- そして,子・一郎だけが記載された戸籍が新たに作成されます。
- その上で,子・一郎は,その戸籍から,すぐに養父・ケンと養母・さくらの戸籍に入籍します。
■公式サイト
※大変申し訳ないのですが,無料法律相談は行っておりません
竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470
http://milight-partners.wix.com/milight-law#!contact/c17jp