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法律事務所ミライト・パートナーズのブログ

大阪市北区梅田1‐1‐3 大阪駅前第3ビル31階にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6341-0135)

別居した場合,婚姻費用の支払負担義務が発生するのはいつから?

■今回のテーマ

離婚の際によく問題になるものの1つとして,「婚姻費用」というものがあります。

 

婚姻費用とは,次のようなお金のことを指します。

婚姻費用とは,「夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生活費をいい,衣食住の費用・交際費・医療費・子供の養育費(子の監護費用)・教育費等である。」*1 

婚姻費用 とは「一般的には,夫婦とその未成熟子の共同生活のために必要とされる費用であり,具体例として,衣食住に関わる費用や,子供の養育や教育等に関わる費用,医療費などが考えられる。もっとも,子の状況(病弱であり,生活能力もない場合)や親の経済状況等に応じて,成年の子のための生活費や学費も,これに含まれるとされている。」*2

 

「定義を読んでもよく分からない!」という方が少なくないかもしれません(笑)。

 

具体例を出しましょう。

現在,婚姻費用が実際に問題になることが多いのは,夫婦が別居をした場合(かつ離婚が成立していない場合)です。

このような場合,特に専業主婦(主夫)の方は,通常,十分な生活費を得る仕事を有していません。このままでは,専業主婦(主夫)の方は直ちに生活に困窮してしまいます。

そのため,このような専業主婦(主夫)の方が,配偶者に対して,生活費等を請求する場合に問題となるのが「婚姻費用」です。

「婚姻費用の分担は,夫婦共同体における内部的な関係として位置付けられるものである。もっとも,特に問題なく,家庭生活が営まれている場合には,婚姻費用分担をめぐる問題が生ずることは多くないだろう。

 実際に,この問題が顕在化するのは,婚姻が破綻しつつあるような場面においてである。」*3 

 

婚姻費用は,離婚調停を申し立てた場合にしばしば問題になるため,裁判所にも説明用のページが用意されています。

裁判所|婚姻費用の分担請求調停
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_03/

 

 

ちなみに,この婚姻費用を請求できる or 支払わなければならない根拠は,民法760条にあります。

(婚姻費用の分担)
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

 

 

婚姻費用については,様々な論点や問題があります。

今回とりあげるテーマは,その中でも,「婚姻費用負担義務の発生時期」です。

より具体的に言いますと,「別居した場合,いったい,いつから婚姻費用の支払を相手方に請求できるのか?」というものです。

 

 

 

■結論

結論としては,婚姻費用の分担義務の始期は,従来から,一般に「請求時」(婚姻費用分担調停申立時)と考えられています。 

 

例えば,ある有名な東京高裁の決定は以下のように述べます。

「婚姻費用分担義務の始期は、同義務の生活保持義務としての性質と両当事者間の公平の観点から考えれば、権利者が義務者にその請求をした時点と解すべきである。」*4

 

上記決定は30年以上前の決定ではありますが,そこで示された考え方は,現在の裁判所でも支持されています。例えば,最近の審判例でも,次のように説明されています。

 「本件審判において形成すべき婚姻費用分担の始期については、申立人が本件調停を申し立てた平成26年●月とするのが相当である」*5

 

「その始期は,本件調停申立時である平成24年●月分からと認めるのが相当」*6

 

「婚姻費用分担の始期については,婚姻費用分担調停の申立時と解される」*7

 

「申立人が本件調停を申し立てたのは平成20年●月であるから,同月から婚姻費用を支払うべきである。」*8

 

「申立人と相手方は婚姻した夫婦であるから,相手方は,申立人との間で,その資産,収入,社会的地位等に応じた社会生活を維持するのに必要な費用の分担義務を負うものである。そして,婚姻費用の支払いの始期については,申立人が婚姻費用の分担を求める調停を申し立てた平成18年●月から,その終期は離婚又は円満同居に至るまでの間とするのが相当である。」*9

  

 

但し,必ずしも調停申立による必要はありません。ある裁判例は次のように述べます。

「その分担の始期については,婚姻費用分担義務の生活保持義務としての性質と当事者間の公平の観点からすると,本件においては,申立人が相手方に内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明するに至った平成●年●月とするのが相当である。」*10

 

この裁判例の匿名解説も次のように述べます。

「婚姻費用や養育費の支払時期については,裁判所の合理的な裁量によって決定すべき問題であるが,実務上は,権利者が婚姻費用や養育費の分担請求をした時とすることが多く,通常は,調停や審判の申立てをした月としている。もっとも,調停や審判の申立てをする前に婚姻費用や養育費の請求をしたことが内容証明郵便や電子メール等で明らかな場合には,その請求をした月を始期とすることが多い。」*11

 

 

 

 

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TEL 06-6341-0135

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*1:内田貴民法4』(東京大学出版会,2002年)29頁。

*2:窪田充見『家族法』(有斐閣,2011年)68頁。

*3:前掲・窪田68頁。

*4:東京高決昭和60年12月26日判タ603号80頁。ちなみに,この判決の左陪席は家族法の研究で有名な梶村太市判事です。

*5:東京家審平成27年6月26日判時2274号100頁。

*6:福島家郡山支審平成25年6月10日家月65巻7号198頁。

*7:横浜家審平成24年5月28日家月65巻5号98頁。

*8:大阪家審平成20年9月3日公刊物未登載。

*9:横浜家小田原支審平成19年8月9日公刊物未登載。

*10:東京家審平成27年8月13日判時2315号96頁。

*11:判時2315号96頁。