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法律事務所ミライト・パートナーズのブログ

大阪市北区梅田1‐1‐3 大阪駅前第3ビル31階にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6341-0135)

適格機関投資家等特例業務に関するよくある質問と誤解

■今回のテーマ

弊所は,金融法と民事事件を重点的に取り扱っています。

金融法――と言っても色々な法律がありますが――の中でも分かりにくいのが金融商品取引法です。

 

裁判官や研究者の先生方も「金商法の読みにくさは何とかして欲しい」とよくおっしゃっています。

 

そんな金融商品取引法の中でも,よく質問されるのが適格機関投資家等特例業務に関するものです。

というわけで,今回は,適格機関投資家等特例業務に関するよくある質問」を取り上げたいと思います。

 

適格機関投資家等特例業務って何?

一言で言えば,プロと少人数の一般人を対象とするファンドです(場合によっては素人がゼロの場合もあります。)。

 

金商法の本来の仕組みから言えば,集団投資スキーム持分の販売・勧誘や,自己募集,私募を行うためには第二種金融商品取引業の登録が必要です(金商法28条2項1号・2号同法29条)。

同様に,募集・勧誘等で集めた財産を「主として」*1有価証券等で自己運用するためには,投資運用業としての登録が必要です(金商法28条4項3号同法2条8項15号同法29条)。

プライベート・エクイティ・ファンド組成,運用,販売を行うためには,原則として金商法上の第二種金融商品取引業および投資運用行の登録を受けることが必要となるのです。」*2

 

ところが,適格機関投資家等特例業務では,例外的にこれらの登録が不要となります(金商法63条1項によって,同法29条の適用除外が定められています。)。

その趣旨は以下のとおりです。

金商法では,健全な活動を行っているファンドを通じた金融イノベーションを促進しつつ,資本市場の健全性を確保する観点から,いわゆるプロ向けファンドの自己私募業務または自己運用業務(「適格機関投資家等特例業務」)を行う者については,登録制としない一方,実態把握が可能となるよう「特例業務届出者」として事前届出制とし,業規制の柔軟構造化が図られている(法63条1項・2項)。」*3 

 

「このような制度となった背景には,ベンチャー・キャピタルに対して厳格な業規制を行うと,ファンドの運営コストが著しく高まるといった批判が強かったことも影響しています。また,投資のプロである適格機関投資家のみを相手にする業者に対しては,一般投資家保護の観点からの厳格な規制は必要ないものと考えられます。そこで,金商法は,そうした業者に対しては金融商品取引業者としての登録義務を課さず,商号や主たる営業所の所在地など,一定の事項をあらかじめ届け出るだけで営業することを認めているのです(63条2項)。」  *4

 

 適格機関投資家等特例業務の要件を,誤解を恐れずざっくり説明しますと以下のとおりです(金商法63条1項施行令17条の12第1項・2項)。

  1.  1名以上のプロ(適格機関投資家)と49名以下の一般人を相手方として行う自己私募業務
  2.  1名以上のプロ(適格機関投資家)と49名以下の一般人から出資・拠出された金銭などの自己運用業務

 

つまり,最低1名以上のプロがいなければ,適格機関投資家等特例業務を営むことはできません。この点は注意が必要です。

 

 

 

適格機関投資家等特例業務届出業者が勧誘して良い49名って業者ごとにカウントするのですか? それとも,ファンドごとにカウントするのですか?

結論から申し上げれば,一定の条件を満たせばファンドごとにカウントすることが「できます」。常にファンドごとにカウントできるわけではありません。

 

上述したように,適格機関投資家等特例業務を営む場合は,自己私募業務でも,自己運用業務でも関与できる一般人は49名以下である必要があります。

この点については,施行令17条の12第3項2号ロが定めていますので,ちょっと見てみましょう。

金融商品取引法施行令17条の12第3項

 法第63条第1項第1号に規定する権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める要件に該当するものとする。
 当該権利の取得勧誘に応ずる取得者が適格機関投資家(法第六十三条第一項第一号 イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。以下この号において同じ。)である場合 当該権利に係る契約その他の法律行為により、当該権利を適格機関投資家に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていること。


 当該権利の取得勧誘に応ずる取得者が適格機関投資家等(法第六十三条第一項第一号 に規定する適格機関投資家等をいう。)のうち適格機関投資家以外の者(同号 イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。ロにおいて「一般投資家」という。)である場合 次に掲げるすべての要件
  当該権利に係る契約その他の法律行為により、当該権利を取得し又は買い付けた者が当該権利を一括して他の一の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていること。
  当該権利が有価証券として発行される日以前六月以内に、当該権利と同一種類のものとして内閣府令で定める他の権利(ロにおいて「同種の新規発行権利」という。)が有価証券として発行されている場合にあつては、当該権利の取得勧誘に応じて取得する一般投資家の人数と当該六月以内に発行された同種の新規発行権利の取得勧誘に応じて取得した一般投資家の人数との合計が四十九名以下となること

 

……金商法の読みにくさが分かっていただけましたでしょうか(笑)?

重要なのは,施行令17条の12第3項2号ロ(上記下線部分)です。

 

非常に簡単に言えば,49名のカウントをするときは,①「6ヶ月以内に発行された」か否か,②「同一種類のもの」か否かが基準になるということです。

つまり,6ヶ月以内に発行された,同一種類の権利に関するものについては,49名のカウント対象になるということです。

 

したがいまして,例えば,AファンドとBファンドがあった場合,Aファンドが発行されてから6ヶ月を経過した後にBファンドが発行されているのであれば,49名のカウントの仕方は,Aファンドについて投資されている一般人の数をカウントし,それとは別に,Bファンドについて一般人の数をカウントします。

同様に,AファンドとBファンドが「同一種類のもの」でない場合も,Aファンドについてカウントし,それとは別に,Bファンドについてカウントします。

 

 尚,「同一種類のもの」か否かの判定方法については,業府令234条で定められています。

金融商品取引業等に関する内閣府令第234条  (同種の新規発行権利)
 令第17条の12第3項第2号ロに規定する当該権利と同一種類のものとして内閣府令で定める他の権利は、有価証券としての当該権利と発行者及び出資対象事業が同一である有価証券としての権利とする。

 

 

 

■じゃあ,適格機関投資家等特例業務届出業者は,例えば,6ヶ月ごとに49名の一般人からお金を集め続けて ,それを「全部」,「株式」に投資することができるの?

結論から申し上げますと,少なくとも,そのようにして集めたお金の「全部」を「株式」に投資することはできませんここは誤解されがちな部分です

 

ややこしい話ですが,49名のカウントの仕方について定めた施行令17条の12第3項2号ロは,金商法63条1項1号の委任を受けた規定です。

というわけで,金商法63条1項を見てみましょう。

金融商品取引法63条1項(適格機関投資家等特例業務)
 次の各号に掲げる行為については、第二十九条及び第三十三条の二の規定は、適用しない。
 適格機関投資家等(適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(その数が政令で定める数以下の場合に限る。)及び適格機関投資家をいう。以下この条において同じ。)で次のいずれにも該当しない者を相手方として行う第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募適格機関投資家等(次のいずれにも該当しないものに限る。)以外の者が当該権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものに限る。)
  その発行する資産対応証券(資産の流動化に関する法律第二条第十一項 に規定する資産対応証券をいう。)を適格機関投資家以外の者が取得している特定目的会社(同条第三項 に規定する特定目的会社をいう。)
  第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に対する投資事業に係る匿名組合契約(商法第五百三十五条 に規定する匿名組合契約をいう。)で、適格機関投資家以外の者を匿名組合員とするものの営業者又は営業者になろうとする者
  イ又はロに掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者


 第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利(同一の出資対象事業(同項第五号に規定する出資対象事業をいう。)に係る当該権利を有する者が適格機関投資家等(前号イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。)のみであるものに限る。)を有する適格機関投資家等から出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)の運用を行う同条第八項第十五号に掲げる行為

 

……相変わらず読みにくいですね。

下線を引いた引用部分を御覧いただきたいのですが,施行令17条の12第3項2号ロの委任規定である金商法63条1項1号は「私募」について定めた規定です。

「運用」については定めていません。「運用」について定めているのは金商法63条1項2号です。

 

つまり,49名の一般人を数えるときは①「6ヶ月以内に発行された」か否か,②「同一種類のもの」か否かが基準になる,と定めていた施行令17条の12第3項2号ロは,「私募」についてしか適用されません

 

換言すれば,「運用」については,施行令17条の12第3項2号ロのような規定がない以上,原則に戻って,頭数基準で49名以下の一般の方から拠出された財産しか「運用」することができません。6ヶ月のスパンをあけて募集したとしても,49名を超える一般人の財産を「運用」することはできません。

 

したがいまして,例えば,半年ごとに一般人40名から財産を集め,最終的に1年後に集まった80名の財産を「運用」しようとしても,それは適格機関投資家等特例業務としては許されないことになります。

なぜならば,頭数基準で49名を超えているからです。

 

但し,ここがまたややこしいのですが,ここで許されない「運用」とは,金融商品取引業としての運用(金融商品取引業としての登録が必要になる運用)です。

 

そのため,金融商品取引業としての運用でなければ,適格機関投資家等特例業務届出業者は,上述のような,例えば80名の財産を用いた投資ができます。

 

では,金融商品取引業者としての運用とは何でしょうか?

この点については以下のように説明されます。

「自己運用行為を業として行って『金融商品取引業』に該当するのは,主として有価証券またはデリバティブ取引にかかる権利に対する投資として運用する場合であって,ファンド組成して主として不動産などのこれら以外の財産に対する投資として運用する行為は,業として行われるものであっても,『金融商品取引業』に該当するものではない(法35条1項15号2項1号・2号・5号の2・6号参照)。『主として』とは,基本的に運用財産の50%超を意味する。」*5

 

2条 8項15号における『主として』という要件は,その文言から,運用財産の50%を超に当たる金銭等を有価証券等に係る権利に対して投資している状態を指すと考えられる。このため,有価証券等に係る権利に対する投資運用財産の割合が50%以下であれば,投資運用業に該当せず,本法の業規制も及ばない。」*6

 

 

尚,この「主として」(金商法2条8項15号)の意義については,金融庁パブリック・コメントで示されています(79頁のQ190以下参照)。

コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7/00.pdf

 

したがいまして,冒頭の設例について言えば,例えば,賃貸用不動産に投資するという形であれば,金商法上の問題はありません。

 

 

このように,金融商品取引法は非常に複雑ですので,金融関係のビジネスを行おうとする場合は,専門家に相談されることをお薦めします。

 

 

  

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*1:「主として」の意味については後述します。

*2:宍戸善一=大崎貞和『ゼミナール金融商品取引法』(日本経済新聞社,2013年)107頁。

*3:松尾直彦『金融商品取引法』(商事法務,第3版,2014年)350頁。

*4:前掲・宍戸=大崎107頁。

*5:前掲・松尾329頁。

*6:川村正幸編『金融商品取引法』(中央経済社,第4版,2012年)276頁。