■今回のテーマ
刑事弁護をしていると,自分の事件に執行猶予が付されるかどうか,被疑者や被告人の方から時々尋ねられることがあります。
実は,執行猶予は,どんな場合でも付することができるわけでありません。一定の条件(要件)が法律で定められています。
という訳で,今回のテーマは,「執行猶予を付すための必要条件」です。
■そもそも執行猶予って何?
「執行猶予」については,皆さん,だいたい,何となくイメージを持っておられるのではないかと思います。
法的に正確な定義をご紹介すれば以下のとおりです。
「刑の執行猶予とは,刑の言渡しをした場合において,一定期間その執行を猶予し,その期間を無事に経過した場合には刑の言渡しを執行させ,条件に違反した場合には執行猶予を取り消して刑の執行をしようとするものである。」*1
■刑法25条の説明
執行猶予の必要条件については,刑法25条が定めています。
(執行猶予)
刑法第25条1 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
一般の方には読みにくい と思いますので説明します。
まず,刑法25条1項は,現在,執行猶予期間中ではない方に対する刑について執行猶予を付す場合の必要条件を定めています。多くの場合,この1項が問題になります。
刑法25条1項の場合の必要条件は次のとおりです。
- 今回の判決が,3年以下の懲役 or 禁錮 or 50万円以下の罰金であること
- 執行猶予を相当とする情状が存在すること
- 今までに*2禁錮刑や懲役刑を受けたことがないこと(1項1号) or 以前に受けた禁錮刑や懲役刑の執行を終わってから又は刑の執行の免除を受けてから5年が経過していること(1項2号)
特に,刑法25条1項2号が読みにくいのですが,要するに,刑務所から出所して(少なくとも)5年が経っていなければ,執行猶予は認められない,ということです。*3
次に,刑法25条2項は,現在,執行猶予期間中の方に対する刑について執行猶予を付す場合の必要条件を定めています。執行猶予中の方に,改めて執行猶予を付すことになますので,実務上,25条2項の執行猶予は「再度の執行猶予」と呼ばれています。
再度の執行猶予の場合,執行猶予中の身でありながら再度,犯罪行為に及んでいるわけですから,刑法25条1項の場合よりも必要条件が厳しくなっています。具体的には次のとおりです。
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