法律事務所ミライト・パートナーズのブログ

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婚約破棄の事例紹介

■今回のテーマ

以前,別の拙稿でも取り上げましたが,ときどき問合せのある婚約破棄(婚約解消)に関する実際の裁判例をご紹介したいと思います。

弁護士が説明する婚約破棄の注意点 
http://milight-partners-law.hatenablog.com/entry/2015/07/24/024059

 

 

婚約破棄(婚約解消)に関する裁判例は意外に数多くあります。

ただ,当たり前のことですが,それぞれの事案ごとに,事実関係は千差万別です。当事者である男性や女性の考え方,言動,勤務先や環境も違いますし,ご家庭の事情も異なります。

「幸福な家庭はどれも似たものだが,不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」
――レフ・トルストイ

 

ですから,婚約破棄(婚約解消)に関する裁判例で,自分に有利に使えそうなものがあるとしても,速断は禁物です。

もし,あなたが,婚約破棄(婚約解消)で悩んでいらっしゃるのであれば必ず専門家に相談してください。

 

 

■女性が婚約を不当に破棄としたとして,女性に対する男性からの損害賠償請求(55万円)が認められた事案(東京地判平成26年11月11日公刊物未登載)

女性が婚約破棄(婚約解消)を決意するまでの事実関係は以下のとおりです。

  1. 女性は,元々,勤務先の上司(既婚者)と交際していたが,男性と交際を始める頃には関係を清算していた。
  2. しかし,女性は,男性と交際を開始した後,仕事上の相談のために上司と会い,カラオケ店で落ち合った後,性行為を行う目的でラブホテルに行った。
  3. 男性は,その時,『iPhoneを探す』により,女性がラブホテルに入ろうとしていることを知って現場に 向かい,ラブホテルを出ようとした女性と出会い,不貞行為であるとして女性を叱責した上,女性の勤務先及び上司の家族に暴露する旨を告知した。
  4. 男性は,上司も呼び出し,上司に対して今後,女性と交際をしない旨の念書を書かせた。
  5. 男性と女性はこの事件の後も交際を続けたが,以下のような問題が発生した。
    (1)男性は,女性が男性の助言にもかかわらず,会社の飲み会等に遅くまで参加することについて不満を募らせ,女性は,会社の同僚との付合いで帰宅が遅くなるのはやむを得ないと考え,男性がそれを理解しないことに不満を募らせていった。
    (2)自分との交際を重視することを強く求める男性と,男性以外の者との交際もそれなりに継続しようとする女性の間で意見の相違が生じていた。
    (3)男性と女性が仲違いをした際に,男性が数回にわたって上司の名前を出して女性に対して不満の意を表した。
  6. 女性は,上記(1)~(3)のような男性に対する不満,男性との意見の相違,男性からの上司の名前を出す形での不満の表出等から,男性との婚姻生活を行うことは不可能であると考えて,男性との婚約の解消を決意した。 

 

但し,女性については,以下のような事実も認定されています。

  1. 上記(1)に関して,女性は男性に謝罪して以後早く帰宅する旨約束しながら,再度約束を破って深夜に帰宅しては謝罪することを繰り返し,時折自己の意見を述べただけで男性と真摯に話し合おうとしなかった。
  2. 上記(2)に関して,自分を重視しないとして不満を述べる男性の機嫌をとろうとするだけで,男性と真剣に話し合っていないこと,女性は,男性の態度に不満を持ちつつも,双方の両親を紹介し,その後も,クリスマスを一緒に過ごすなどして,少なくとも表面 的には男性と仲良く過ごしていた。ところが,女性は,年末になって,男性に対し,突然一方的に婚約を解消する旨のメールを送付した。

 

このような事実関係を前提として,裁判所は次のような判断を示しました(太字は当ブログによります。)。

 

「以上の経過に鑑みると,女性が男性との婚約を解消した時点で女性と男性の考え方には相当の差異が生じていたことが認められるが,女性は,男性と真剣に話合いをしていないから,女性が男性に婚約の解消の意思を伝えた時点で,婚姻生活が困難であることが明らかであったとはいえない。」。

「また,男性との関係の悪化については,女性にも相応の帰責事由があるといえるから,女性の婚約の解消の意思表示について正当な理由があるとまではいえず,女性は婚約の一方的な破棄に基づく損害賠償責任を免れない。」。

「もっとも,上記(1)のとおり女性が男性に不満を募らせ,上記(2)のとおり意見の相違が生じたことについては,男性にも相応の帰責事由がある上,女性が男性との婚約の解消を決意した原因として,上記(3)のような男性の態度にも問題があったことが認められるから民法418条を類推適用して,婚約不履行についての男性の責任割合を5割,女性の責任割合を5割と認めるのが相当である。」。

 

 

■女性が,男性に対して,男性が婚約を不当に破棄したとして損害賠償を請求したが,婚約が成立していないとして請求が棄却された事例(東京地判平成25年6月27日公刊物未登載)

本件の事実関係の一部は以下のとおりです。

  1. 女性は,幼少のころからクラシックギターを習い,数々のコンクールで受賞を果たしているプロのギタリストである。
  2. 男性は,不動産会社に勤務する会社員である。
  3. 男性は,平成23年4月,女性に対し,ギターのレッスンを申し込み,同年5月から女性が講師を務めていた教室の生徒として,女性からギターのレッスンを受けるようになった。
  4. 女性と男性とは,その後,交際するようになった。男性は,平成23年7月2日,女性の実家を訪れて女性の母に挨拶し,同月9日以降,男性方で女性と同居するようになった。
  5. 女性と男性とは、平成23年7月16日から18日までの間,登山に行ったが,山小屋での自炊等を巡って口論となるなど,2人の関係は険悪な状態となった。女性は,登山の帰途において,男性との交際を続けることが困難であると考えるに至った。男性も女性に対して恋愛関係の解消を提案し,女性が実家に戻ることとなった。
  6. 女性は,ギター教室の受講生の女性2人と送別会を開くこととし,平成23年7月18日夕方,男性に対し,「今晩,送別会をしてもらうことになりました。」と告げて,男性方を出た。男性は,女性が男性方から退去するための準備等について気にかけており,夜遅くまで女性から連絡がないことに立腹し,女性の荷物を玄関前に出した。女性と男性とは,女性の帰宅後に口論となり,男性は,女性に対して「出て行け」などと言って,女性の手を強く引っ張った。なお,女性と男性とは,その後に和解し,同居生活を続けることとなった。

 

裁判所は概ね次のように述べて,婚約の成立を否定しました(太字は当ブログによります。)。

婚約の成立には,当事者間に確定的に夫婦になる合意が存在することを要するところ,以下に指摘する諸点に照らすと,女性と男性との間においては,確定的に夫婦になる合意があったとはいえず,婚約が成立したと認めることはできない。

  1. 同居を開始する際の女性及びその母と男性との間のやりとり等についての女性の陳述書の記載には,これを裏付ける客観的証拠がなく,男性作成の陳述書には,男性が女性及びその母に対して婚姻を前提に女性と同居する旨述べたことを否定する部分があることに照らすと,にわかに採用できない。
  2. 男性作成の陳述書には,登山道具を結納品として贈ったことを否定する旨の記載があるほか,女性作成の陳述書にも,男性から登山道具を贈られた意味についての特段の記載はないことに照らすと,男性が女性に対して贈った登山用品が結納品に相当すると認めることはできない。
  3. 女性は,男性と同居を開始して9日後には,男性との口論等が原因で交際の継続が困難と考え,男性も,女性に対し,女性との関係を解消する旨申し出ていることが認められ,その後,結果として同居生活を継続することにはなっているものの,一旦は,女性と男性の双方が,容易にその関係の解消を検討するに至っている
  4. その後の同居生活において,女性と男性との間で,入籍等の予定について,具体的な協議がされたとの事実は存在しない

 以上の事情に照らすと,女性と男性とは,交際関係の延長として,同居するようになったに止まり,女性と男性との間において,確定的に夫婦になる合意が成立していたとまでは認められない。したがって,女性と男性との間で婚約が成立したと認めることはできない。

 

 

 ■その他

結婚式を終えているにもかかわらず,入籍をしない事案というのは少ないと思いますが,実際にあった例としては以下の事案があります。


大津地判平成25年2月20日公刊物未登載

婚約成立後,結婚式も終えたが,式翌日に男性が明確な理由なく女性との入籍を拒否したことによって交際が破綻し,入籍できなかったとして,女性が男性に対して損害賠償を求めた事案(請求認容。約336万円)。

 

 

また,正当な理由のない婚約破棄に基づく損害賠償として,いわゆる「結婚退職」・「寿退社」によって発生した減収分の賠償が認められるか否かについては争いがありますが,ある裁判例はこれを否定しています。

東京地判平成15年7月17日公刊物未登載

「正当な理由のない婚約破棄に基づく損害賠償として,いわゆる『結婚退職』により生じた減収分の賠償が認められるか否かについては,これを認めるべきであるとする見解もある。しかしながら,今日の社会は,両性の平等の理念のもと男女共同参画社会の実現を目指す段階に入っており(原告自身が陳述書の中で自己の職業意識について陳述しているとおりである。),ことに原告と被告の世代においては,既に,『結婚退職』は社会通念上当然のことではなくなっていて,結婚を機に退職するか否かは,もっぱら当該本人の自由な意思決定に委ねられている。その際,将来の配偶者となる相手方との間で,将来の自分たちの婚姻生活のあり方の決定という意味で協議が行われるべきことは当然であり,その中で,事実上,一方が他方の意向を尊重した結果として一方の退職という選択がなされるということも十分考えられるけれども,最終的には,それは,自己の生き方を自己の意思により選択した結果に他ならない。」 

 

 

■関連する拙稿

婚約破棄は,婚約が成立したことを前提とするものですが,そもそも,婚約が成立していたかどうかが問題になることもあります。その点に関する近時の裁判例を幾つか紹介した記事です。

婚約の成否に関する近時の裁判例のご紹介
http://milight-partners-law.hatenablog.com/entry/2015/08/25/105313

 

 

 

 

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