■今回のテーマ
弁護士の佐々木亮先生や北周士先生に対する懲戒請求が話題になっています。
余命ベギラゴン ~懲戒請求を煽る人、煽られる人~ - Togetter
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というわけで,今回は,弁護士に対する懲戒請求が違法なものであるとして損害賠償責任が認められた判例・下級審裁判例をいくつかご紹介したいと思います。
尚,紙幅等の関係上,橋下徹さんの関係で話題となった最判平成23年7月15日民集65巻5号2362頁の紹介は省略していますが、この判例の存在が本件における損害賠償の否定に「直結」することはないと考えられます。*1 *2。
*1:もちろん,この判例が本件と全く無関係というわけではありません。むしろ,本件との関係でこの判例は問題になり得ると考えられます。ただ,この事件の被告は橋下徹さんで,橋下さんご自身は懲戒請求を行っていません。つまり,この事件で問題になったのは橋下徹さんによる「呼びかけ行為」であり,表現行為が問題となっています。他方,今回の件は,懲戒請求を行った方々が被告になるようですので,上記の最判平成23年7月15日は当然には本件に及ばないと考えられます。
*2:この点について,上記最判平成23年7月15日を担当された中島基至最高裁調査官は次のように述べられます。「懲戒請求に係る不法行為該当性の判断基準は,原判決が引用する前掲最三小判平成19・4・24(略)が示すところであり,1審判決が説示するとおり,虚偽の懲戒請求をすれば虚偽告訴罪(刑法172条)という刑事罰が科されることになる。懲戒請求の上記性質から,本判決と平成19年判例との関係も問題となろうが,本判決は表現行為の違法性が問題とされる事案であるのに対し,平成19年判例は懲戒請求自体の違法性が問題とされる事案であるという点で異なるため,平成19年判例の射程は,本件事案には直ちには及ばないと理解されるべきであろう。」,「ただし,呼び掛け行為が,視聴者の主体的判断を妨げて懲戒請求をさせるような『煽動』にまで及ぶような場合など,懲戒請求を呼び掛けた者が懲戒請求の行為主体であると規範的に評価できるような場合には,平成19年判例が説示する趣旨を踏まえ,上記呼び掛け行為の不法行為該当性が検討される余地もあり得るように思われる。また,懲戒請求自体が不法行為を構成するような場合には,当該懲戒請求を呼び掛ける行為は,幇助犯,教唆犯として不法行為責任を問われることもあり得るであろう。」(以上につき「弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為が、不法行為法上違法とはいえないとされた事例」『最高裁判所判例解説 民事篇 平成23年度(下)』〔法曹会〕578頁)。