竟成法律事務所のブログ

大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング409号室にある金融法や民事事件を重点的に取り扱う法律事務所です(TEL 06-6926-4470、大阪弁護士会所属)

別居した場合,婚姻費用の支払負担義務が発生するのはいつから?

■今回のテーマ

離婚の際によく問題になるものの1つとして,「婚姻費用」というものがあります。

 

婚姻費用とは,次のようなお金のことを指します。

婚姻費用とは,「夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生活費をいい,衣食住の費用・交際費・医療費・子供の養育費(子の監護費用)・教育費等である。」*1 

婚姻費用 とは「一般的には,夫婦とその未成熟子の共同生活のために必要とされる費用であり,具体例として,衣食住に関わる費用や,子供の養育や教育等に関わる費用,医療費などが考えられる。もっとも,子の状況(病弱であり,生活能力もない場合)や親の経済状況等に応じて,成年の子のための生活費や学費も,これに含まれるとされている。」*2

 

「定義を読んでもよく分からない!」という方が少なくないかもしれません(笑)。

 

具体例を出しましょう。

現在,婚姻費用が実際に問題になることが多いのは,夫婦が別居をした場合(かつ離婚が成立していない場合)です。

このような場合,特に専業主婦(主夫)の方は,通常,十分な生活費を得る仕事を有していません。このままでは,専業主婦(主夫)の方は直ちに生活に困窮してしまいます。

そのため,このような専業主婦(主夫)の方が,配偶者に対して,生活費等を請求する場合に問題となるのが「婚姻費用」です。

「婚姻費用の分担は,夫婦共同体における内部的な関係として位置付けられるものである。もっとも,特に問題なく,家庭生活が営まれている場合には,婚姻費用分担をめぐる問題が生ずることは多くないだろう。

 実際に,この問題が顕在化するのは,婚姻が破綻しつつあるような場面においてである。」*3 

 

婚姻費用は,離婚調停を申し立てた場合にしばしば問題になるため,裁判所にも説明用のページが用意されています。

裁判所|婚姻費用の分担請求調停
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_03/

 

 

ちなみに,この婚姻費用を請求できる or 支払わなければならない根拠は,民法760条にあります。

(婚姻費用の分担)
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

 

 

婚姻費用については,様々な論点や問題があります。

今回とりあげるテーマは,その中でも,「婚姻費用負担義務の発生時期」です。

より具体的に言いますと,「別居した場合,いったい,いつから婚姻費用の支払を相手方に請求できるのか?」というものです。

*1:内田貴民法4』(東京大学出版会,2002年)29頁。

*2:窪田充見『家族法』(有斐閣,2011年)68頁。

*3:前掲・窪田68頁。

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認知症事件(JR東海事件)最高裁判決に関する簡単な解説とコメント

■今回のテーマ

平成28年3月1日,最高裁は,認知症に罹患した高齢者が起こした鉄道事故事件に関する損害賠償請求について,JR東海の請求を棄却する内容の判決を出しました。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85714

 

認知症JR事故、家族に監督義務なし 最高裁で逆転判決:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASJ2X0VW5J2WUTIL028.html 

「一審・名古屋地裁判決は妻と長男に請求全額の賠償を命じ、二審・名古屋高裁判決は妻に約360万円の賠償を命じていた。」

 

 

この事件については,従来からいくつもの報道が為されており,社会的に注目されていました。

また,最高裁判決を受けて,法律家の方々もTwitterで呟かれており,実務上も重要な判決であることが分かります。

togetter.com

 

 

というわけで,今回は,この認知症事件(JR東海事件)に関する簡単な解説をしたいと思います。

 

今後,研究者の先生方による詳細な判例評釈や,担当調査官による解説が出ると思います。本格的かつ精確な議論については,それらのご論考をご参照ください。

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簡易裁判所判事の釈明権の行使態様が違法であるとされた事例

■今回のテーマ

兵庫県弁護士会所属の弁護士・蔭山文夫先生のブログで,以下のような記事が紹介されていました。

blog.livedoor.jp

 

詳細については,上記ブログをご覧いただきたいのですが,要するに,簡易裁判所判事の釈明権の使い方がおかしい,ということで,国家賠償法に基づく損害賠償を請求し,それが一部認められたという事案です。

 

蔭山先生は,上記ブログに判決書をアップされているのですが,その中でも,簡易裁判所判事の釈明権行使の違法を認定した部分を以下で引用し,ご紹介させていただきます。

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金融庁が「金融行政モニター」を設置しました。

報道されているとおり,金融庁は,2016年1月29日から「金融行政モニター」という窓口を設置しました。

金融行政モニター制度を創設、外部の意見で質的向上を=金融庁 | Reuters
http://jp.reuters.com/article/aso-financial-opinion-idJPKCN0V4053

麻生太郎金融担当相は26日の閣議後会見で、市中の金融機関から見ると金融庁には『金融処分庁』というイメージが残っていると思うとし、『提言したくても、監督官庁に直接ものが言いにくいとちゅうちょする人もいるのではないか』と指摘した。

 

金融行政モニターは,平成27事務年度(金融庁の事務年度は7月始まり翌年6月終わりです)金融行政方針で述べられていた制度です。

金融行政モニター受付窓口について:金融庁
http://www.fsa.go.jp/monitor/gyouseimonitor.html 

 

誤解を恐れずに言えば,金融行政モニターとは,要するに,金融庁の監督下にある金融機関の方々や関係者の方々も,金融庁の顔色をうかがわずに率直に金融庁に対して意見や批判を述べて欲しい。」という制度です。

 

言い換えれば,金融行政モニターは,金融機関に対する不満や苦情等を直接の対象としているわけではない,ということです。

 

ただし,「金融機関の問題点や違法行為について金融庁に『適切』に情報提供したにもかかわらず,金融庁は迅速に動いていない。金融庁の情報収集態勢や,情報活用態勢に問題があるのではないか。」という形であれば,それは金融行政の問題を指摘していることになりますから,金融行政モニターの対象になる……と考えられます。

 

 

金融庁のサイトは,分かりにくい構成になっているのですが,金融機関に関する情報等を金融庁に提供する場合の窓口はこちらです。

金融モニタリング情報収集窓口への情報
https://www.fsa.go.jp/kensa/

 

  

 

■公式サイト

お問合せはお電話 or 公式サイトの送信フォームからどうぞ!

竟成(きょうせい)法律事務所
TEL 06-6926-4470

http://milight-partners.wix.com/milight-law#!contact/c17jp

 

【メモ】勾引とは何か,どのような手続か

■今回のテーマ

このような報道に接しました。

“号泣元県議”野々村被告、強制出廷へ…あす初公判、神戸地検係官が自宅へ 勾引状執行へ手続き着手  - 産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/160125/wst1601250034-n1.html

 

News Up “号泣”元県議 出廷に向けた奥の手 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160125/k10010385101000.html

 

 

被告人に対して勾引が為されることは,珍しいです。

自分が刑事弁護を担当していた被告人の方が勾引された経験がある弁護士は少ないと思います。

 

というわけで,今回は,「勾引」に関する基本的な知識をご説明したいと思います。

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公正証書による遺言が無効とされた諸事例(裁判例)のご紹介

■今回のテーマ

2016年1月24日,次のような判決があったという報道に接しました。

家政婦は見た! 「全遺産はあなたに」の遺言有効 3000万相当持ち去った実娘2人敗訴(1/4ページ) - 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/160124/afr1601240011-n1.html

「平成23年に死去し「遺産は全て家政婦に渡す」としていた資産家女性=当時(97)=の遺言に反し、実娘2人が遺産を不当に持ち去ったとして、家政婦の女性(68)が遺産の返還を実娘側に求めた訴訟の判決が東京地裁であった。」

 

ところで,遺言書は自分(自筆)で作成することができますが,方式が厳格に決まっています。方式に反すると,その遺言は無効になる危険性が高いです。

 

そのため,確実な遺言書を作成されたい方は,通常,公正証書による遺言を用います。

遺言 日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/yu.html

 公正証書遺言とはどのようなものですか? そのメリットとデメリットを教えて下さい。

 公正証書遺言は,遺言者が,公証人の面前で,遺言の内容を口授し,それに基づいて,公証人が,遺言者の真意を正確に文章にまとめ,公正証書遺言として作成するものです。
 遺言者が遺言をする際には,さてどんな内容の遺言にしようかと思い悩むことも少なくないと思いますが,そんなときも,公証人が親身になって相談を受けながら,必要な助言をしたりして,遺言者にとって最善と思われる遺言書を作成していくことになります
 公証人は,多年,裁判官,検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家で,正確な法律知識と豊富な経験を有しています。したがって,複雑な内容であっても,法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし,もとより,方式の不備で遺言が無効になるおそれも全くありません。公正証書遺言は,自筆証書遺言と比べて,安全確実な遺言方法であるといえます。
 また,公正証書遺言は,家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので,相続開始後,速やかに遺言の内容を実現することができます。さらに,原本が必ず公証役場に保管されますので,遺言書が破棄されたり,隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。(後略)

 

公正証書による遺言が無効とされることは「ほとんど」ありません。

しかし,実際の裁判例では,公正証書による遺言が無効となることもあります。

 

と言うわけで,今回は,公正証書による遺言が無効となった最近の事例をいくつかご紹介したいと思います(尚、弊所では公正証書遺言の事件を複数取り扱っておりますが、以下の裁判例は弊所が受任した事案ではありません。あくまで過去の裁判例のご紹介です。)。

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【メモ】司法修習生時代の手帳から

■今回のテーマ

片付けものをしていたら,司法修習生時代の自分のメモ帳が出てきました。

私は,修習中は常時,小さくてとても薄いメモ帳を携帯していて,教えていただいたことや分からなかったことを書き留めていました。

今,再読してみて改めて勉強になったこともあれば,正直,「それはちょっと違うのではないか」と思うこともあります(笑)。

 

いずれにせよ,修習生の方に役に立つ「かも」しれませんので,私がご教示いただいたことのうち,一部をご紹介させていただきます。

但し,情報を羅列しているだけで,特に系統立っているわけではありません。ご容赦ください。

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